要点
- 石けんが安全かどうかを決める道具は、1 g単位で量れるデジタルスケールです。液体も含めて、すべて重さで量ります。
- 苛性ソーダは、ポリプロピレン(識別コード5)かステンレスの容器で溶かします。アルミニウム、スズ、亜鉛、銅、木は絶対に使わないでください。
- スティックブレンダーを使えば、一時間以上かかる手での混ぜ作業が数分で済みます。
- 油脂1000 gのバッチは約1.4 kgの生地になり、約1.4リットルのローフ型を満たします。
- 一度石けんに使った道具は、それからずっと石けん専用です。
このページの内容
石けんを作るのに作業場は要りません。はじめてのバッチに必要なのは、スケール、スティックブレンダー、苛性ソーダで傷まないピッチャーと鍋、型、そして苛性ソーダの安全ガイドに挙げた保護具です。ほとんどは、石けん用に取り分けた普通の台所用品です。このガイドでは、一つ一つの道具と選ぶときのポイント、そして苛性ソーダに絶対に触れさせてはいけない少数の素材を説明します。
石けんが安全かどうかはスケールで決まる
石けん作りの分量はすべて重さで、苛性ソーダはグラム単位で量ります。1 g刻みで表示され、風袋引きボタン(容器を載せた状態で表示をゼロに戻すボタン)があり、油脂の入った鍋を載せても容量を超えないよう、少なくとも5 kgまで量れるデジタルスケールを買ってください。
十分の一オンス単位で表示するスケールは、苛性ソーダには粗すぎます。表示の刻みが2.8 gおきなので、どの表示も実際の値から最大1.4 gずれる可能性があり、小さなバッチでは苛性ソーダのかなりの割合になります。
| スケールの表示単位 | 最大の丸め誤差 | 実際になりうるスーパーファット |
|---|---|---|
| 十分の一オンス(2.8 g刻み) | 1.4 g | 3.1%〜6.9% |
| グラム | 0.5 g | 4.3%〜5.7% |
オリーブオイル、ココナッツオイル、シアバター、ひまし油の油脂500 g(60/25/10/5%、当サイトのはじめて作るパーム不使用の石けん)をスーパーファット5%で作る場合で、水酸化ナトリウムが69.5 g必要です。数値は計算ツールによるものです。
水や液体の油も含めて、すべて重さで量ります。カップ一杯の油や大さじ一杯の苛性ソーダは、決まった重さではありません。苛性ソーダの粒はすくうたびに詰まり方が変わり、体積で量ったレシピは、苛性ソーダの量が正しいかを確かめられません。スケールには新しい電池を入れておき(弱った電池では表示が狂います)、ときどき校正用の分銅や、重さが正確にわかっているもので確かめてください。
混ぜる:スティックブレンダーか手か
スティックブレンダー(ハンドブレンダー)なら、油脂と苛性ソーダ水溶液がトレース、つまり生地にとろみがつき始める状態になるまで数分です。泡立て器を使って手で混ぜると、一時間以上かかることがあります。基本的なモデルで十分ですが、オリーブオイルの多いトレースの遅いレシピでは、モーターが強いほうが助かります。シャフトと刃のガードがステンレス製で、生地が浸水ラインを越えずに鍋の底まで届く長さのものを選んでください。浸水ラインを越えるとモーターが壊れると、Alicia Grossoは警告しています。ブレンダーは石けん専用にします。
上手に使えば、ほとんどはねません。
- スイッチを入れる前にヘッドを生地に入れ、一度傾けて中にたまった空気を逃がします。
- ヘッドを液面の下に保ち、短く断続的に回して、合間にかき混ぜます。
- スイッチを切って刃が止まってから持ち上げます。
まずピッチャーに入れた水で練習してください。香料や色を手で混ぜ込むには、シリコンへらや泡立て器もやはり役に立ちます。
ピッチャー、鍋、ボウル
苛性ソーダ用のピッチャー。 注ぎ口と取っ手の付いた丈夫なポリプロピレン製のピッチャーです。底に識別コード5かPPの文字が刻まれているものを探してください。ポリプロピレンは強い苛性ソーダに耐え、実験器具メーカーは135 °Cまでの使用に適するとしています。作りたての溶液が達しうる90 °C(194 °F)以上を十分に上回る温度です。油脂1000 g分の苛性ソーダ水溶液はおよそ420〜440 gで、体積は半リットルに満たないので、1リットルのピッチャーで十分です。乾いた苛性ソーダは、別の小さなポリプロピレンのカップに量ります。
石けん作り用の鍋。 固形の油脂を溶かし、生地を混ぜるためのステンレス鍋です。入れるのは三分の二までにします。油脂1000 gのバッチで約1.4 kgの生地になるので、3〜4リットルの鍋なら、はねずに混ぜられる余裕があります。小さなバッチでは、広い鍋より細い鍋のほうが、ブレンダーのヘッドが生地に浸かったままになるので向いています。ホーロー鍋も使えますが(Susan Miller Cavitchはホーロー鍋で石けんを作っていました)、ホーローに傷がない間に限ります。Grossoは、下の金属が露出する小さな穴や欠けがないかを確かめています。
苛性ソーダを混ぜるもの。 長いステンレスのスプーンで、継ぎ目のない一体成形のもの。Grossoが指摘するように、ステンレスの道具のなかには、ほかの金属のねじやリベットで組み立てられたものがあり、一体成形のへらなら頭部が外れて生地に落ちることもありません。シリコンへらは生地用に取っておきます。ある実験器具メーカーの表では、シリコンは強い水酸化ナトリウムに連続して触れる条件での耐性が低いとされているので、苛性ソーダに一分ほど浸けたへらは問題ありませんが、シリコンのピッチャーやカップに苛性ソーダを入れておくのはやめてください。
ガラス。 耐熱ガラスのピッチャーは多くの石けん作りの本に登場しますが、熱いアルカリはガラスを少しずつ侵食し、熱いガラスのピッチャーは冷水で急に冷やすと割れることがあります。ポリプロピレンなら、どちらのリスクもなく同じ役目を果たせます。
小さなカップとスプーン。 油脂や添加物を量るための小さなボウルをいくつか。フレグランスオイルにはガラスかステンレスのものを使います。フレグランスオイルは一部のプラスチックを侵すことがあるからです。乾いた添加物なら、プラスチックの計量スプーンで問題ありません。
温度計
ステンレスのプローブが付いたデジタル温度計は液体そのものの温度を測るので、苛性ソーダ水溶液や溶かした油脂に向いています。赤外線温度計はすばやく測れて苛性ソーダに触れることもありませんが、向けた表面の温度しか測れず、光沢のある金属では低く表示し(ステンレス鍋の側面ではなく液体に向けてください)、湯気があると狂います。温度の許容範囲が広いはじめてのバッチなら、どちらでも使えます。範囲ははじめての石けんのガイドにあります。
型
油脂1000 gには、約1.4リットルの型が必要です。苛性ソーダ計算ツールの初期設定のローフ型、25 × 9 × 6 cm(1350 mL)には、上の表の配合の油脂950 g分が入ります。計算ツールの「型に合わせて分量を決める」パネルを使えば、どんな型とレシピでもこの数値を計算できます。
- シリコンのローフ型は内張りが要らず、きれいに外れますが、軟らかいレシピは型から出せる硬さになるまで二、三日かかることがあります。
- 木の型には、フリーザーペーパー(プラスチック加工面を石けん側に)かクッキングシートを敷きます。木は固まりつつある石けんの熱を保つので、ジェル化が起きやすくなります。
- 個別型なら、切らずに一つずつの石けんができます。
- 代用の型も十分使えます。ろう引きの紙製の牛乳パックやジュースのパック(アルミ箔を張ったものは使わない)、丈夫なプラスチックの食品容器、ビニールを敷いた靴箱、丸い石けんならエンドキャップを付けたプラスチックパイプなどです。密閉容器は石けんを吸い付けて、出しにくいことがあります。
苛性ソーダに侵されるアルミの型やアルミ箔、石けんがほとんど外れないガラスの器は避けてください。型のサイズの合わせ方と内張りについては、型のガイドで詳しく説明しています。
カットと熟成
長く薄い、波刃でない包丁なら、ローフをきれいに切れます。波刃は石けんを引きずって裂いてしまいます。チーズ用のワイヤーカッターも使えますが、かすかな線が残ることがあり、波形カッターを使うと、マーケットで見かける波形の縁になります。野菜用のピーラーで鋭い角を整えられます。製菓用品店で売っている刃渡り15 cm(6 in)のスケッパーで、小さなローフはきれいに切れます。LetcavageとBuckは、基本のレシピすべてにこれを使っています。専用のソープカッターは、石けん作りを続けるとわかってからでかまいません。
新しい石けんは四〜六週間、すべての面に空気が当たるよう間隔をあけて立てて熟成させます。クッキングシートを敷いた網の冷却ラック、すのこ状の棚、棚の上に置いたプラスチックコーティングの網戸用ネットやプラスチックの手芸用キャンバスなどが使えます(アルミニウムかもしれない、むき出しの金属の網は避けます)。風通しがよく、直射日光の当たらない場所に置きます。この先はカットのガイドと熟成のガイドで説明しています。
石けんの道具は石けん専用に
鍋、ピッチャー、へら、ブレンダーは、一度石けんに使ったら、それからずっと石けん専用です。プラスチックやシリコンの傷には残留物がたまり、フレグランスオイルはしみ込んで洗っても落ちません。苛性ソーダと飲み物の両方に使ったピッチャーは、いつか誰かが飲み物だと思って手に取ります。すべてに「石けん専用」と書き、台所の引き出しから離して、箱にまとめて保管してください。
絶対に使ってはいけないもの
| もの | 使ってはいけない理由 |
|---|---|
| アルミニウムの鍋、型、アルミ箔、道具 | 苛性ソーダはアルミニウムを侵し、可燃性の気体である水素を発生させます。ローフ型の多くはアルミニウム製です |
| スズ、亜鉛(亜鉛めっき)、銅、真鍮 | どれも苛性ソーダに侵されます。スズと亜鉛は水素も発生させます |
| こびりつかない加工の鍋 | 加工は苛性ソーダに耐えますが、下の鍋はアルミニウムであることが多く、傷が一つあれば苛性ソーダがそこに届きます |
| 鋳鉄 | さびるうえ、熱い苛性ソーダは鉄をより速く腐食させます |
| 木のスプーンやまな板 | 木は苛性ソーダを吸い込み、その中で少しずつ分解されるので、木目に苛性ソーダを抱えたままになります |
| ポリカーボネートやPETGのピッチャー(透明な「割れない」もの) | 強い苛性ソーダでどちらも傷みます |
| PETの飲料ボトル | PETGと同じポリエステルの仲間で、飲料ボトルに入った苛性ソーダは飲み物と間違えられるおそれがあります |
| 薄くてやわなプラスチック容器(素材を問わず) | 熱い液体を入れると、持ち上げたり注いだりするときにたわんでゆがみます |
苛性ソーダに適さない素材。苛性ソーダメーカーの取り扱い指針、UKHSAの資料集、実験器具メーカーの耐薬品性の表によります。
はじめての道具一式
| もの | 選ぶポイント | 優先度 |
|---|---|---|
| デジタルスケール | 1 g刻み、風袋引きボタン、容量5 kg以上 | 必須 |
| 保護ゴーグル | 目の周りを密閉し、3(EN 166)またはD3(ANSI Z87.1)の表示があるもの | 必須 |
| ニトリル手袋 | 箱入りの使い捨てか、手首まで覆う繰り返し使えるもの | 必須 |
| 苛性ソーダ用のピッチャー | ポリプロピレン(コード5)、約1リットル、注ぎ口付き | 必須 |
| 苛性ソーダを量る小さなカップ | ポリプロピレン、乾いた状態に保つ | 必須 |
| 長いスプーン | ステンレス | 必須 |
| 石けん作り用の鍋 | ステンレス、3〜4リットル | 必須 |
| スティックブレンダー | ステンレスのシャフト | 必須 |
| シリコンへら | 耐熱性のもの二本 | 必須 |
| 型 | 約1.4リットルのシリコンのローフ型、または内張りした箱やパック | 必須 |
| 包丁 | 長く薄い、波刃でないもの | 必須 |
| 温度計 | デジタル、ステンレスのプローブ | あると便利 |
| 熟成ラック | 日の当たらない、風通しのよいラックや棚ならなんでも | あると便利 |
| エプロン、ペーパータオル、苛性ソーダのピッチャーを冷やすたらい | あると便利 | |
| ソープカッター、プレーナー、面取り用の道具 | 後でよい |
はじめてのバッチ用の一式で、油脂1000 gまでのバッチに対応する大きさです。
どれも専門的な道具ではありません。いくらかお金がかかるのはスケールとスティックブレンダーだけで、どちらも基本的なもので十分です。手を抜いてはいけないのは二つ。グラム単位で量れなければならないスケールと、密閉できなければならないゴーグルです。道具がそろったら、次ははじめての石けんのオイルの選び方です。
試してみたいレシピ
すべてのレシピ出典
これらの出典に関する注記は英語のページにあります。各文書と照合したときの文言のまま掲載しています。
- Caustic Soda Handbook . Occidental Chemical Corporation (OxyChem) , 2026.
- Sodium hydroxide: incident management (Compendium of chemical hazards) . UK Health Security Agency , 2024.
- Nalgene plastic labware chemical resistance reference guide . Thermo Fisher Scientific .
- SCHOTT DURAN: tubing, capillary and rod of borosilicate glass 3.3 . SCHOTT .
- How to get great results with an infrared thermometer . Fluke Corporation , 2026.
- Smart Soapmaking . Anne L. Watson, Shepard Publications , 2013.
- Soap Crafting . Anne-Marie Faiola, Storey Publishing , 2013.
- Natural Soap Making . Elizabeth Letcavage and Melissa Harden, Stackpole Books , 2013.
- Making Transparent Soap . Catherine Failor, Storey Publishing , 2000.
- The Everything Soapmaking Book, 3rd edition . Alicia Grosso, Adams Media , 2013.
- Basic Soap Making . Elizabeth Letcavage and Patsy Buck, Stackpole Books , 2009.
- The Natural Soap Book . Susan Miller Cavitch, Storey Publishing , 1995.
- The Complete Photo Guide to Soap Making . David Fisher, Creative Publishing International , 2018.
- The Natural Soap Making Book for Beginners . Kelly Cable, Althea Press , 2017.
- The Natural Soap Chef . Heidi Corley Barto, Ulysses Press , 2012.