要点
- クリーム石けんは大部分がステアリン酸の石けんです。主に水酸化カリウムと少量の水酸化ナトリウムで作り、加熱し、休ませ、ホイップして仕上げます。
- ステアリン酸は遊離脂肪酸です。アルカリはこれをすぐに中和し、グリセリンではなく水を生じます。クリーム石けんのレシピがグリセリンを加えるのはこのためです。
- アルカリに占めるカリウムの割合で、どれだけやわらかいままかが決まります。Fisherのクリーム石けんは、当サイトの計算ツールではカリウム約75%、スーパーファット5%になります。
- 真珠のような光沢は、休ませている間にできる脂肪酸の結晶によるものです。質感は作った当日ではなく、落ち着いてから判断してください。
- 一部のレシピでホイップのときに加えるホウ酸は、EUとグレートブリテンでは化粧品への使用が禁止されています。少量の遊離ステアリン酸でもほぼ同じ働きをします。
- サボン・ノワールのような軟石けんは、液体油で作るカリ石けんで、クリームではなくペーストです。
このページの内容
クリーム石けんは、液体石けんと固形石けんの中間にあります。Fisherは自分のクリーム石けんを、しっかりしているのにすくえて、ホイップクリームより少し重く、ボディソープにもシェービングソープにも向くと説明しています。どこから見ても石けんで、三つのものを珍しい割合で使って作ります。ステアリン酸が大部分を占める油脂、大部分が水酸化カリウムで少量の水酸化ナトリウムを加えたアルカリ、そして大量の水とグリセリンです。ホットプロセスの石けんと同じように加熱し、休ませてから、ホイップします。
クリーム石けんは古い系統に属します。SimmonsとAppletonの1908年のシェービング用石けんは、ソーダ石けんとカリ石けんを混ぜて、すぐに立ち、クリーミーで長持ちする泡を作りました。Thomssenの1922年の手引きには、ステアリン酸とココナッツオイルを苛性カリとグリセリンで鹸化した工場製のシェービングクリームが載っており、当時のバニシングクリーム(ステアリン酸塩のスキンクリーム)を、単なる軟石けんだと説明しています。シェービング用石けんのガイドは同じ化学の硬い側を扱っており、当サイトの半クリーム状のシェービング用石けんはその中間にあります。
クリーム石けんを支える化学
ステアリン酸はもともと酸
石けんに使う油脂の大部分はトリグリセリドです。三つの脂肪酸がグリセロールの骨格についたもので、アルカリはそれを切り離さなければならず、その過程でグリセリンが生じます。市販のステアリン酸は違います。ステアリン酸とパルミチン酸がほぼ半分ずつで、酸価205〜211 mg KOH/gが鹸化価206〜212の範囲に収まっています。つまり、ほぼすべてが遊離脂肪酸です。アルカリはこれを鹸化するのではなく、すぐに中和し、副産物はグリセリンではなく水です。Thomssenも1922年に同じ区別をしています。アルカリを遊離脂肪酸と結びつけるのは中和であって、鹸化ではない、と。
ここから実際的な結果が二つ出てきます。ステアリン酸はアルカリを入れた直後に生地を硬くするので、最初に溶かしておき、バッチは熱いまま作業します。また、半分がステアリン酸の石けんは、ふつうの石けんの約半分のグリセリンしか含みません。クリーム石けんのレシピがグリセリンを加え戻すのはこのためで、Fisherのレシピでは油脂538.5 gに156 gを使います。材料表には載っていますが、手順にはいつ入れるかが一度も書かれていません。Thomssenはグリセリンを最初に油脂と一緒に入れており、これがいちばん簡単な入れ方です。Grossoはアルカリの水溶液に溶かしています。
真珠のような光沢はどこから来るか
加熱したてのクリーム石けんは、密で、つやがあり、半透明です。ホイップしたときと休ませている間に、白く、ふんわりと、真珠のような光沢を帯びていきます。理由は結晶です。ごく近い種類のクリーム、ステアリン酸トリエタノールアミンにステアリン酸を加えたものについてのUnileverの研究では、熱い混合物が液晶を作り、冷めてから置いておくうちに石けんの一部がゆっくりとステアリン酸に戻り、それが平たい板状の結晶として成長することがわかりました。この板状の結晶が、ステアリン酸塩のクリームに強い真珠光沢を与えます。Thomssenは、同じ結晶化の石けん職人版をカリ軟石けんに見ていました。星形の結晶性の斑点で、彼はこれを「figging」と呼び、冬に多く、苛性カリに少量のソーダを加えて意図的に起こしていました。
つまり、クリーム石けんは作ったあとも変わり続けます。質感は加熱した当日ではなく、休ませてから判断してください。
なぜカリウムか、どれだけ使うか
カリウム石けんはやわらかく溶けやすいままで、ナトリウム石けんは結晶になって固まります。クリーム石けんでは、すくってホイップできるやわらかさを保つためにカリウムを主に使い、こしを出すためにナトリウムを少し加えます。計算ツールはこの配分を「KOHの割合」、つまり鹸化のうち水酸化カリウムが担う割合として表します。考え方はNaOH、KOHと併用のガイドで説明しています。
Fisherの基本のクリーム石けん(Basic Cream Soap)は、油脂538.5 g(ステアリン酸283.5 g、ココナッツオイル127.5 g、ひまわり油85 g、ひまし油42.5 g)に対して、水酸化カリウム91 gと水酸化ナトリウム20 gを量ります。水酸化カリウムの純度を90%として当サイトの計算ツールに通すと、KOHの割合75%、スーパーファット約5%になります。計算ツールが求める量は91.7 gと19.6 gです。
『The Everything Soapmaking Book』のGrossoのクリーム石けんは、さらにカリウム寄りです。ステアリン酸と油脂454 g(16 oz)に対して水酸化ナトリウム7 g(0.25 oz)と水酸化カリウム85 g(3 oz)、水709 g(25 oz)です。純度90%のフレークなら、当サイトの計算ツールではKOHの割合約89%、スーパーファット11%と読め、フレークが純粋ならスーパーファットは約2%です。彼女のレシピには純度が書かれていません。昔の軟石けんの作り手は、限界を反対側から示しています。SimmonsとAppletonは、暑い時期に軟石けんを硬めに保つため、苛性カリの最大四分の一を苛性ソーダに置き換えることを認め、苛性ソーダがわずかに多すぎるだけで見た目が損なわれ、分離すると警告しました。
当サイトのクリーム石けんのレシピは、ステアリン酸30%、ココナッツオイル25%、オリーブオイル25%、ひまし油10%、シアバター10%で、スーパーファット4%、水は油脂の60%です。鹸化の四分の三を水酸化カリウムで行い、これはFisherと同じ配分です。ほかの割合にした場合に必要な量を表に示します。
| KOHの割合 | 水酸化ナトリウム | 水酸化カリウム(90%) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 20% | 57.6 g | 22.5 g | 併用時の計算ツールの初期設定 |
| 50% | 36.0 g | 56.1 g | |
| 75% | 18.0 g | 84.2 g | 当サイトのレシピ。Fisherのクリーム石けんと同じ配分 |
| 100% | 0 g | 112.3 g | すべてカリウム |
当サイトのクリーム石けんのレシピを、油脂500 g、スーパーファット4%で計算ツールにかけた値です。水は300 gのままです。カリウムの割合が高いほど、石けんはやわらかくなります。
カリウム四分の三で試す。当サイトのクリーム石けんの油脂500 gを、KOHの割合75%、スーパーファット4%にすると、水酸化ナトリウム18.0 gと純度90%の水酸化カリウム84.2 gを水300 gに溶かして使います。
計算ツールで開く計算ツールの作り方の説明は固形石けんを前提にしています。クリーム石けんでは、下の手順に従ってください。
作り方
Fisherの方法の概略:
- アルカリ水溶液を作る。二種類のアルカリを水に溶かします。
- 油脂を溶かす。ステアリン酸はほかの油脂よりかなり高い温度で溶けるので、単独で溶かします(一般的なグレードは55〜57 °C、131〜135 °Fで固まります)。そこにココナッツオイルと、使うならバターを溶かし入れ、液体油を加えます。
- 混ぜる。熱い油脂を強にしたスロークッカーに注ぎ、アルカリ水溶液を加えて混ぜます。生地は、溶けたミルクセーキのような薄い状態から、だまのあるマッシュポテトを経て、はちみつのようななめらかなクリームになります。
- 加熱する。ふたをして加熱し、30分ごとに確認して、盛り上がってきたら混ぜて沈めます。一時間ほどで硬くなって混ぜられなくなるので、そこからはかたまりに切り分けて、ひっくり返します。
- 休ませる。3〜4時間後には、全体が金色で半透明になっているはずです。火を止め、ふたをした鍋のまま24時間置きます。
- ホイップする。Fisherはホウ酸の溶液を混ぜ入れてスティックブレンダーでホイップし、石けんは白っぽく、ふんわりとなります。ホウ酸が何をしているのか、代わりに何を使えばよいかは次の節で説明します。色と香りを加えてホイップし、もう一度休ませます。思ったより硬ければ、水を大さじ一杯ずつ加えてホイップします。
Grossoの方法も同じ流れで、もっと時間をかけます。スロークッカーで2½時間、20分ごとに混ぜ、加熱を止める前にテストします。一晩休ませてから、スタンドミキサーのパドルで打ち、水を57 g(2 oz)ずつ加えて、メレンゲのようにふんわりするまで続けます。そのあと少なくとも一週間、毎日混ぜながら寝かせます。昔の石けん職人はこれを「rotting」(腐らせること)と呼びました。
加熱が終わるまでは、苛性ソーダを使うどの石けんとも同じように、ゴーグル、手袋、長袖を着用してください。ステアリン酸の生地は熱くてべたつくので、かたまりに切り分けてひっくり返す間も腕を覆っておきます。
ホイップの前とあと。休ませたあとの加熱済みの石けん(奥)はワセリンのようにつやがあって半透明で、手前は同じ石けんをホイップしたものです。
ホウ酸でのホイップと、その代わりに使うもの
Fisherは、ホウ酸14 gを熱湯113 gに溶かした液を、休ませた石けんにホイップして混ぜ入れます。すると石けんは急に白っぽく、ふんわりします。クリームの硬さが足りなければ、さらに7 gを加えます。ホウ酸がしているのは酸塩基の化学です。ホウ酸は弱酸で、NISTがpH 9.2と認証しているホウ砂の緩衝液の酸の側にあたり、そのpHでは、ステアリン酸塩の一部からカリウムを奪うのに十分な酸性を持ちます。KanickyとShahは、ステアリン酸の見かけのpKa、つまり半分が石けんで半分が遊離酸になるpHを10.15と測定しました。ホウ酸が遊離させたステアリン酸は、遊離酸としてクリームの中に残ります。板状の結晶がステアリン酸塩のクリームに真珠光沢を与える、あの遊離酸と同じものです。要するに、ホウ酸は加熱のあとで、遊離ステアリン酸という形でスーパーファットを上げているのです。
ホウ酸とホウ酸塩は、EUでは規則(EU)2019/1966によって化粧品への使用が禁止された物質のリストに載っており、同じ項目を維持したグレートブリテンでも同様です。そのため、ホウ酸でホイップしたクリームはそこでは販売できません。カナダはホウ酸を5%まで認めていますが、ラベルへの警告表示が必要です。
ホウ素を使わなくても、ステアリン酸を少し中和せずに残せば、ほぼ同じ効果が得られます。Thomssenはこの方法でシェービングクリームを仕上げていました。冷ました試料を味見して、3%の過剰になるまでステアリン酸を加えたのです。石けんを味見するのはまねしてはいけないことですが(理由は石けんのpHのガイドで説明しています)、化学としては正しいものです。加熱が終わって、中和するアルカリがもう残っていない状態で、溶かしたステアリン酸を数%熱い石けんに混ぜ入れれば、遊離酸としてクリームに残ります。
保存
Fisherのクリーム石けんは半分近くが水なので、液体石けんと同じ注意が当てはまります。ふたのある清潔な瓶を使い、濡れた指ではなく清潔なスプーンですくい、販売するなら石けんのpHで効く防腐剤を使います。ふたは閉めておいてください。開けたままだと表面が乾きます。Grossoは、指を入れたくなる瓶より、チューブやエアレスポンプを好んでいます。クリーム石けんは温めるとかえって固くなるだけなので、冷たいまま絞り袋で詰めます。また、ホイップで含んだ空気によって重さが変わるので、重さではなく容量で詰めます。
軟石けん:サボン・ノワールとカリのペースト
液体石けんがボトルで売られるようになる前、カリ石けんはペーストとして売られていました。軟石けん(ソフトソープ)です。Thomssenの手引きには、コーン油、大豆油、綿実油、オリーブ油の油かす(olive-oil foots)などの液体油を苛性カリで鹸化した、繊維工場向けや洗車用の軟石けんが載っています。仕上がった石けんは冷たいガラスで判定しました。試料を押しつけたとき、くっつかずに滑るものはアルカリが強すぎたのです。絹の撚糸に使う、彼のオリーブ粕油のカリ石けんは、当サイトのレシピのページにあります。液体石けんのガイドのペーストも同じもので、希釈する前で止めたものです。
北アフリカの黒い石けん、サボン・ノワールは、この種の軟石けんです。オリーブオイル、多くはオリーブポマスオイルやつぶした丸ごとのオリーブを、カリでやわらかいペーストに鹸化したものです。当サイトのサボン・ノワールのレシピはシンプルな形で、オリーブオイル100%を水酸化カリウムでスーパーファット3.5%にし、水は油と同じ量です。油500 gに対し、計算ツールが求めるのは純度90%の水酸化カリウム101.9 gと水500 gです。スーパーファットがあるのは液体石けんのガイドで述べた理由からで、0%では、範囲チェックによると石けんは最大3.3%の苛性カリ過多になりえます。オリーブポマスオイルには独自の鹸化価の範囲があり、オリーブオイルの184〜196 mg KOH/gに対して182〜193なので、同じものと考えずに計算ツールで油を切り替えてください。あとは液体石けんのペーストとまったく同じように作り、ただ希釈しないでおきます。
サボン・ノワールは、西アフリカのブラックソープとは別のものです。こちらはアルカリも色も、プランテンの皮とカカオの殻の灰から得ており、パーム核油とシアバターを使います。当サイトのオマージュは同じ油脂を使っていますが、灰は再現できません。
試してみたいレシピ
すべてのレシピ出典
これらの出典に関する注記は英語のページにあります。各文書と照合したときの文言のまま掲載しています。
- The Complete Photo Guide to Soap Making . David Fisher, Creative Publishing International , 2018.
- Soap-Making Manual . E. G. Thomssen, D. Van Nostrand Company , 1922.
- The Everything Soapmaking Book, 3rd edition . Alicia Grosso, Adams Media , 2013.
- The Handbook of Soap Manufacture . W. H. Simmons and H. A. Appleton, Scott, Greenwood and Son , 1908.
- Interaction of the acid soap of triethanolamine stearate and stearic acid with water . Zhu S. et al. (Unilever R&D), Journal of Physical Chemistry B 111(5) , 2007.
- Stearic Acid 50 % (WILFARIN SA-1850) product specification . Wilmar International .
- Effect of degree, type, and position of unsaturation on the pKa of long-chain fatty acids . Kanicky J. R. and Shah D. O., Journal of Colloid and Interface Science 256(1) , 2002.
- Certificate of Analysis, Standard Reference Material 187f: Sodium Tetraborate Decahydrate (Borax), pH Standard . National Institute of Standards and Technology , 2025.
- Regulation (EC) No 1223/2009 on cosmetic products, Annex II, entries 1395 and 1396 . legislation.gov.uk, as substituted by Commission Regulation (EU) 2019/1966 .
- Cosmetic Ingredient Hotlist: boric acid and its salts . Health Canada , 2025.
- Standard for Olive Oils and Olive Pomace Oils (CXS 33-1981) . Codex Alimentarius Commission (FAO/WHO) .