要点
- 液体石けんはカリ石けんです。脂肪酸のカリウム塩は水に溶けたままですが、ナトリウム塩は固形の石けんや、だまのあるゲルに固まります。
- 水酸化カリウムの実際の純度(通常は約90%)を入力し、スーパーファットは低くします。遊離した油は仕上がった石けんに溶けず、石けんを濁らせます。
- ひとさじのペーストが熱湯に澄んで溶けるまで加熱し、量ってから重さで希釈します。ポンプボトルには石けん分15〜25%が適しています。
- ホウ砂とクエン酸が中和できるのは、実際に残っている苛性カリだけです。正しく計算したペーストでは、ホウ砂はEUと英国の化粧品で禁止されている塩を加えるだけで、クエン酸は石けんを脂肪酸に戻してしまいます。
- 希釈した石けんは大部分が水です。精製水、清潔なボトル、少量のバッチを使い、販売するならpH 9〜10で効く防腐剤を使ってください。
このページの内容
液体石けんは、水酸化ナトリウムではなく水酸化カリウムで作る本物の石けんで、硬いペーストになるまで加熱してから水に溶かします。固形石けんより根気が要り、正確な数値が二度必要です。一度目は苛性カリの量、二度目は希釈です。仕上がった石けんは大部分が水だからです。このガイドでは、計算例のバッチとともに作り方を示し、希釈計算ツールが何をしているかを説明し、多くのレシピが理由も言わずに加える工程、つまり中和を詳しく検討します。
液体石けんにカリウムが必要な理由
石けんの分子は、どのアルカリで作っても同じ脂肪酸の鎖で、変わるのは相手だけです。ナトリウム石けんは冷えると結晶になり、これが固形石けんが固まる仕組みです。カリウム石けんははるかに溶けやすいので、カリ石けんは溶けて透明な液体になり、室温でもそのままです。Thomssenの1922年の石けん製造の手引きは、液体石けんを、カリ石けんを水に溶かしたものにすぎないと説明しており、今でもそれが定義のすべてです。NaOH、KOHと併用のガイドでは、二つのアルカリを並べて比べています。
油脂は固形石けんの場合とほぼ同じようにふるまいますが、問いが一つ増えます。石けんがどのくらいの濃さになるか、そしてとろみをつけられるかです。
- ココナッツオイルなどのラウリン酸系の油脂は、泡立ちが速く、とても澄んで溶けますが、さらさらの石けんになり、塩を加えてもほとんどとろみがつきません。
- オリーブオイル、ハイオレイックひまわり油などのオレイン酸の多い油は、泡立ちは控えめですが、マイルドで濃い石けんになり、塩で簡単にとろみがつきます。
- ひまし油はとても澄んだ石けんになり、それでも塩でとろみがつきます。
- パーム油、牛脂、カカオバターなど、パルミチン酸とステアリン酸の多い油脂は、そのカリ石けんが冷えると結晶になるため、濁った石けんになります。Thomssenはこの理由で、透明な液体石けんに牛脂は使えないとしました。
Fisherは、この選択を泡ととろみの兼ね合いとして説明しています。泡で出るディスペンサー用ならココナッツオイルを主体に、市販品のように注げる石けんなら液体油を主体にします。下の三つのレシピはその中間にあります。さらに二つ、作り方まで書いたレシピがあります。ココナッツオイルが半分のココナッツの液体ハンドソープと、オリーブオイルだけの液体カスティール石けんです。
| レシピ | 油脂(油脂全体に対する%) | 油脂中のオレイン酸 |
|---|---|---|
| 手洗い用の液体石けん | ココナッツオイル40、オリーブオイル40、ひまし油20 | 31% |
| ボディ用の液体石けん | ココナッツオイル30、オリーブオイル45、ひまし油15、ハイオレイックひまわり油10 | 42% |
| 液体シャンプー | ココナッツオイル30、オリーブオイル35、ひまし油20、アボカドオイル10、ホホバオイル5 | 34% |
オレイン酸は、計算ツールが示す各レシピの脂肪酸組成によります。Classic Bellsによると、塩で液体石けんにうまくとろみがつくのは、脂肪酸のおよそ半分がオレイン酸のときだけです。したがって、この中で塩でとろみがつきやすいのはボディ用の液体石けんです。
固形石けんのレシピと違う二つの数値
水酸化カリウムの純度
水酸化ナトリウムは、ほぼ純粋な状態で売られています。水酸化カリウムはそうではありません。OECDの評価では、工業用の製品はKOH約91%、水分8%とされており、フレークのラベルはたいてい90%です。計算ツールは、変更しないかぎり90%を前提とし、純粋な必要量を0.9で割ってフレークの重さを出します。90%のフレークなのに設定を100%のままにすると、ペーストの苛性カリは十分の一不足し、油っぽく、濁り、トレースが遅くなります。純度を書いていないレシピは、半分しか書かれていないのと同じです。Grossoの『The Everything Soapmaking Book』の液体石けんでは、ココナッツオイル、ひまし油、ホホバオイル766 g(27 oz)に水酸化カリウム177 g(6.25 oz)を量ります。当サイトの計算ツールでは、フレークが純粋ならスーパーファット3.1%、ふつうの90%のフレークなら12.8%で、透明な石けんが抱えきれないほど多くの遊離した油になります。ラベルの数値を入力し、容器のふたは閉めておいてください。水酸化カリウムは空気中の水分と二酸化炭素を吸うため、開けたままの容器の中身は、含まれる苛性カリより重くなります。
スーパーファット
固形石けんは、クッションとして数%の未反応の油を含んでいます。液体石けんでは、その油の行き場がありません。石けん溶液に溶けないので、濁りや表面の膜として現れます。そのため、液体石けんはスーパーファット0〜3%で作ります。水酸化カリウムの場合、計算ツールは3〜4%で注意を、4%を超えると警告を表示します。この慣例の由来はスーパーファットのガイドで説明しています。
では、なぜいつも0%にしないのでしょうか。苛性カリの数値は、そのもとになる鹸化価と同じ精度しかなく、実際の油脂は公表された範囲の中でばらつくからです。0%で作ると、当サイトのボディ用の液体石けんは、計算ツールの範囲チェックによれば、苛性カリ過多3.1%から油脂過多2.9%までのどこにでもなりえます。3%では最悪の場合でもわずかにゼロを下回り、計算ツールはそれを指摘します。一般的な範囲より半ポイント高い3.5%では、最悪の場合が0.5%、最良の場合が6.3%で、レシピが苛性カリ過多になることはもうありません。これが、中和を不要にしているものです。そのため、ボディ用の液体石けんのページ、計算例のバッチ、作り方まで書いた二つの液体石けんはすべて3.5%を使っており、計算ツールの注意はその余裕の代償です。
計算例のバッチを計算する。ボディ用の液体石けんの油脂500 gをスーパーファット3.5%にすると、90%の水酸化カリウム111.6 gと水334.7 gが必要です。
計算ツールで開くこのリンクの水は水酸化カリウムの重さの三倍で、25%の水溶液です。Fisherのペーストと同じ割合です。上の表のレシピのページでは、ペーストの水を多くしており、最大で油脂と同じ重さにしています。そうするとペーストはやわらかくなり、トレースまでに時間がかかります。どちらでも構いません。希釈の工程で、ペーストが含む水をすべて計算に入れるからです。
ペーストを作る
カリ石けんは、固形石けんのようにはトレースしません。生地はとろみがついたかと思うと、薄くなって分離し、またマッシュポテトや濃いアップルソースのような見た目に戻ります。これが何度か繰り返されることもあり、最後に、飴のように伸びる、ブレンダーがほとんど動かないほど硬く不透明なペーストになります。これが液体石けんのトレースで、ここから加熱が始まります。Grossoは、生地は最初から乳白色で不透明なのに薄く、それが突然とろみを増し、固まるにつれて大きな泡が上がってくると書いています。ブレンダーから目を離さないでください。鍋はバッチの四〜五倍の容量のものを使います。ココナッツオイルの多いカリ石けんは鹸化するにつれて膨らむためで、Thomssenも同じ理由で釜の大きさを決めていました。
液体石けんのトレース:飴のように伸びる、硬く不透明なペースト。ここから半透明になるまで加熱します。
- すべてを量る。水酸化カリウムのラベルにある純度で計算ツールにレシピを通し、油脂はスロークッカーに、水酸化カリウムは乾いた容器に、精製水は耐熱の計量カップに量ります。計算例のバッチでは、ココナッツオイル150 g、オリーブオイル225 g、ひまし油75 g、ハイオレイックひまわり油50 g、水酸化カリウム111.6 g、水334.7 gです。
- 苛性カリ水溶液を作る。換気のよい場所で、ゴーグルと手袋を着け、水酸化カリウムを少しずつ水に加えて、溶けるまで混ぜます。とても熱くなり、入れるとジュッと音を立てます。82 °C(180 °F)未満になるまで冷まします。
- 油脂を温める。スロークッカーを弱にして、油脂を65〜71 °C(150〜160 °F)に温めます。
- トレースまで混ぜる。苛性カリ水溶液を油脂に注ぎ、スティックブレンダーを断続的に動かします。偽トレースや分離を越えて、生地が飴のように伸びる硬く不透明なペーストになるまで続けます。液体油だけで作ったFisherのペーストは、そこまで30〜40分かかりました。
- 半透明になるまで加熱する。鍋にふたをして弱のままにします。15〜20分後に確認し、さらに15〜20分後にもう一度確認して、分離した液体を混ぜ戻し、その後は30〜45分ごとに混ぜます。ペーストは金色の半透明になります。Fisherのペーストは、芯まで半透明になるのに2〜3時間かかりました。
- 熱湯でテストする。ペースト28 g(1 oz)を熱湯59 ml(2 fl oz)に溶かして冷まします。透明か、ごくわずかに曇る程度ならペーストは完成です。乳白色だったり、表面に膜が浮いていたりしたら、もう一時間加熱して、もう一度テストします。それでも乳白色のままのペーストは、おそらく苛性カリが反応しきれないほどの油を含んでいました。石けんではありますが、希釈すると濁ります。
- ペーストを量る。火を止め、ペーストを冷まして全量を量ります。水の一部が蒸気として抜けるため、材料の合計より軽くなっています。希釈には実際の数値が必要です。
- 重さで希釈する。下のように、希釈計算ツールで水の量を求めます。その大部分を熱いうちにペースト(または使いたい分のペースト)に加え、泡立てないようにそっとかたまりをほぐします。ふたをして数時間か一晩置き、室温に戻っても濃すぎる場合にだけ残りを加えます。
- 沈殿させ、香りをつけ、ボトルに詰める。希釈した石けんを一、二週間置いてから、沈殿物の上の澄んだ石けんを注ぎ分けます。バッチ全体に香りをつける前に少量のサンプルで香料を試し、清潔な容器に詰めます。
完成の判定テスト。仕上がったペーストは透明か、ごくわずかに曇る程度に溶けます(左)。仕上がっていないペーストは乳白色のままで、もう一時間の加熱が必要です。
希釈:水はどれだけ必要か
液体石けんのレシピどうしで食い違いが出るのは希釈です。「ペースト一に対して」という言い方は、ペーストがすでにどれだけ水を含んでいるかがわからなければ意味を持たないからです。液体石けん希釈計算ツールには四つの数値を入力します。加熱後のペーストの重さ、バッチの油脂の量、純粋な水酸化カリウムの量(計量したフレークにその純度を掛けたもので、90%の111.6 gなら100.4 g)、そして目的の濃度です。鹸化では質量が保存されるため、このツールは油脂と純粋な水酸化カリウムを足したものを石けん分として数えます。石けんとグリセリンの重さは、油脂と水酸化物の重さに等しいからです。ペーストのそれ以外の部分はすべて水とみなし、加える水の量を出します。石けん分を目的の濃度で割り、そこからペーストの重さを引いた値です。液体石けん計算ツールは、両方の工程を一か所で行います。油脂から水酸化カリウムとペースト用の水を出し、ペーストを量ったあとで加える水を出し、さらにスーパーファットが苛性カリ過多になりうるかどうかも確認します。
計算例のバッチが、加熱後に920 gだったとします。石けん分は600.4 gなので、65%のペーストです。20%にすると液体石けんは3002 gになるので、水は2082 g必要です。
| 用途 | 仕上がった液体中の石けん分 | 出典 |
|---|---|---|
| 泡で出るディスペンサー | 約10% | Classic Bells |
| ポンプボトル、スクイズボトル | 15〜25% | 当サイトの計算ツール。Thomssenの液体石けんは脂肪酸を約20%含んでいた |
| 水を減らしてとろみをつける場合 | 30〜40% | Classic Bells(オレイン酸が約半分の石けんの場合) |
あくまで出発点です。同じ濃度でも、どのくらいの濃さになるかは油脂で決まります。
水は熱いうちに加えます。沸騰していても構いません。ペーストは何時間もかけて溶け、その大半の時間はしつこくかたまりが残って見えるので、水が足りないと判断する前に一晩置いてください。最後の一割は取っておきます。薄くなりすぎた石けんは元に戻せませんが、少し濃い程度ならすぐに直せるからです。液体石けんは冷えるととろみが増し、濁ることもあるので、判断は室温で行います。ペーストだけでなく希釈にも精製水を使ってください。硬水は不溶性の石けんを作り、それが沈殿物として沈むというThomssenの指摘は今も当てはまります。また、一度に全部を希釈する必要もありません。ペーストはふたをした瓶で保存でき(FisherとGrossoは冷蔵しています)、すぐに使う分だけ希釈すれば済みます。
Grossoはペーストと同じ重さの水で希釈し、沸騰させてから、ふたをせずに15〜30分煮ます。その間はその場を離れません。ふたをした鍋は吹きこぼれるからです。彼女のレシピでは、希釈計算ツールの計算で石けん分が約三分の一という濃い石けんになり、彼女も泡で出るディスペンサーにはもっと薄くする必要があると書いています。
濁る理由と澄ませる方法
| 見た目 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 全体が乳白色で、熱湯テストに通らなかった | 加熱不足のペースト、または苛性カリが反応しきれないほどの油。スーパーファットが高い、または90%のフレークなのに純度100%と入力した | さらに加熱する。それでも乳白色なら苛性カリが不足していたので、純度の設定を確認し、次回はスーパーファットを低くする |
| 温かいときは透明で冷えると濁る、またはボトルに沈殿物がある | パルミチン酸とステアリン酸の石けんの結晶化 | 沈殿させて澄んだ石けんを注ぎ分ける。次回は硬い油脂を減らす |
| 水道水で現れる濁りや石けんかす | 硬水によるカルシウム石けんとマグネシウム石けん | 精製水を使い、希釈用の水にキレート剤を入れる(酸化防止剤とキレート剤を参照) |
| 香りをつけた直後の濁り、または急に薄くなる | 香料 | サンプルで香料を試す。量を減らすか、別の香料にする |
| 酸を加えたあと、表面に油っぽい層ができる | 酸が石けんを脂肪酸に戻した | 酸性にしない。次の節を参照 |
Fisherは多くの作り手と同じく、希釈した石けんを一、二週間置いて濁りを沈め、澄んだ石けんを別のボトルに注ぎ分けます。液体石けんの作り手は、この沈殿させる期間を「シークエスタリング(sequestering)」と呼ぶことがありますが、紛らわしい呼び方です。化学者にとってsequestering(封鎖)とは、硬水中のカルシウムとマグネシウムをクエン酸ナトリウムのようなキレート剤で結合させることを意味するからです。どちらも役に立ちます。沈殿させればすでにできたものを取り除け、キレート剤は硬水のミネラルがそもそも石けんかすを作らないようにします。Thomssenの工場はさらに進んで、液体石けんを冷やして冷たいまま濾過し、結晶になりやすいものがボトル詰めの前に結晶になるようにしていました。石けんかすについては硬水のガイドで説明しています。
中和:ホウ砂とクエン酸が実際にしていること
多くの液体石けんのレシピは、最後にホウ砂やクエン酸で石けんを「中和」します。Fisherは、熱湯113 gにホウ砂28 gを溶かした液を、ペースト454 g(1 lb)ごとに大さじ二杯混ぜ入れます。液体石けんはスーパーファット0%で作るので、余分な苛性カリは緩衝すべきだという考えからです。一部のレシピ、特に古いものはさらに進んで、わずかに苛性カリが過剰になるように設計され、それを中和する必要がありました(Classic Bells)。こうした処理に効果があるかどうかは、一つの問いにかかっています。ペーストに余った苛性カリがあるかどうかです。
石けんは中性にはできない
本物の石けんの溶液はアルカリ性で、pHは約9〜10です。石けんは弱酸と強塩基の塩だからです。インドのある調査では、浴用石けん64個のうち53個が9〜10の間でした(一部の石けんがもっと高い値を示す理由は石けんのpHのガイドで説明しています)。このアルカリ性は石けんそのものの性質で、遊離した苛性カリによるものではありません。脂肪酸がカリウムと結びついたままでいられるのは、pH約8〜10までです。KanickyとShahは、半分が石けんで半分が遊離酸になるpHである見かけのpKaを測定し、ステアリン酸10.15、オレイン酸9.85、リノール酸9.24、リノレン酸8.28という値を得ました。液体石けんのpHを7に向けて下げていくと、石けんはどんどん遊離脂肪酸に戻り、これは溶けないので、石けんは濁り、やがて分離します。中和剤が役に立つ形で取り除けるのは、油脂が使わなかった水酸化物だけです。
ホウ砂
ホウ砂は溶けるとホウ酸とホウ酸塩の等量の混合物になります。ホウ砂の溶液がpHメーターの校正に使われるのはこのためで、NISTは0.01 mol/kgの溶液を25 °CでpH 9.195と認証しています。ホウ酸の半分は水酸化物を取り込むことができ、その量はホウ砂のグラムあたり水酸化カリウム約0.29 gです(十水和物の式量単位一つにつき水酸化物二つで、十水和物は381.37 g/molです)。つまりホウ砂はわずかな過剰の苛性カリを吸収しますが、それ自体がpH 9.2の緩衝剤なので、石けんをpH 9より大きく下げることはできません。Fisherの量、つまりペースト454 gあたり数グラムのホウ砂は、水酸化カリウムを二、三グラム吸収できます。わずかな過剰には妥当な量ですが、過剰がなければ意味がありません。余った苛性カリのないペーストでは、ホウ砂には役に立つ仕事がありません。代わりにホウ酸の半分が石けんからカリウムを少し奪い、また塩として、ある石けん(Fisherの経験ではココナッツオイルの多いもの)にはとろみをつけ、別の石けんは濁らせたり分離させたりします(Classic Bells)。
法的にも入れない理由があります。ホウ酸とホウ酸塩(ホウ砂を含む)は、EUでは規則(EU)2019/1966によって化粧品への使用が禁止された物質のリストに載っており、同じ項目を維持したグレートブリテンでも同様です。カナダはホウ酸とその塩を5%まで認めていますが、ラベルへの警告表示が必要です。EUやグレートブリテンで販売する液体石けんには、ホウ砂を一切含めることができません。
クエン酸
クエン酸は本物の酸です。無水クエン酸の粉末は、グラムあたり水酸化カリウム0.88 g、または水酸化ナトリウム0.62 gを中和します。後者は、固形石けんにクエン酸を入れるときに計算ツールが使う数値です。ペーストに余った苛性カリがあれば、クエン酸はそれを取り除き、できたクエン酸カリウムは硬水対策にもなります。しかし、余った苛性カリがなくなると、酸は石けんそのものからカリウムを奪い始め、遊離脂肪酸を残します。これは別の経路でスーパーファットを増やすことで、低いスーパーファットを選んで避けようとした濁りや油っぽい膜をもたらします。Classic Bellsは、石けんの中では弱酸としてふるまう重曹でも同じ効果があったと報告しています。
中和する価値があるとき
ペーストに本当に余った苛性カリがあるときだけです。つまり、0%かそれに近い値で計算したレシピ、入力した数値より純度の高い水酸化カリウム、または計量ミスの場合です。まず数値から確認します。計算ツールの範囲チェックで、そのレシピがそもそも苛性カリ過多になりうるかどうかがわかります。フレークに不安があれば、NaOHとKOHのガイドで、クエン酸を使って純度を測る方法を紹介しています。ペーストそのものを調べるのは、もっと難しいことです。アルカリでピンク色になる指示薬のフェノールフタレインは、水分の多い石けんでは、遊離した苛性カリがあるかどうかにかかわらず色が変わります。Thomssenは1922年に、水分の多い石けんでは石けん自身の解離によって「全体が酸性の側にあるにもかかわらず」ピンク色になることがあると警告し、指示薬が遊離したアルカリだけに反応するアルコールに試料を溶かしていました。この方法とその限界は石けんのpHのガイドで説明しています。ペーストが実際に苛性カリ過多だった場合、いちばんきれいな直し方は石けん職人のやり方です。計算ツールで量った少量の油脂を加えて加熱し、余った苛性カリを石けんに変えます。Thomssenは、アルカリ過多のソフトソープをまさにその方法で直していました。さらによいのは、計算例のバッチのように、最初から少しスーパーファットを持たせて計算することで、そうすればこの工程そのものが不要になります。
とろみをつける
希釈したカリ石けんは本来さらさらしていて、どこまで濃くできるかは主に油脂で決まります。合成の増粘剤を使わずにとろみをつける方法は二つあります。水を減らすか、塩を加えるかです。
塩は、石けんのミセル、つまり石けん分子が水中で作る集合体の形を通して働きます。塩があると、オレイン酸カリウムは長いひも状のミセルを作り、それが絡み合って網目になり、液体を濃く弾力のあるものにします。物理化学者がまさにこのふるまいのために研究している系です(Molchanovら)。これは石けん作りの人たちが見ていることと合っています。塩はオレイン酸の多い石けんにはとろみをつけますが、ココナッツオイルの多い石けんにはほとんど効きません。Fisherは、塩水で液体油の石けんをほとんどゲル状にまでできることに気づきました。
20%の食塩水を作ります。Fisherは熱湯113 gに塩28 gを溶かしています。バッチ全体に塩を加える前に、100 gの石けんのサンプルで試してください。室温の石けんに少しずつ加え、まず石けんの重さに対して塩約0.2%(石けん100 gに食塩水1 g)から始め、そっと混ぜて、判断する前に一時間待ちます。とろみが出るまでには時間がかかるからです。加えても変化がなくなったり、石けんが薄くなったりしたら、すぐにやめます。ピークを過ぎると、塩を増やすと再び薄くなります。Classic Bellsは、効果のある範囲を塩0.2〜2%としています。
ほとんどの作り手が使うのは食卓塩で、FisherとClassic Bellsもそうです。食卓塩は石けんのカリウムの一部をナトリウムに置き換えます。昔の石けん職人はこの方法でやわらかいカリ石けんを硬いソーダ石けんに変えていました(Thomssen)。そしてナトリウム石けんのほうが溶けにくい種類です。塩で石けんが濁るなら、塩化カリウムを使えばナトリウムを加えずにとろみをつけられます。
香料もとろみを変えます。Fisherは、温かい石けん85 g(3 oz)に香料を小さじ半分混ぜて三十分待つ方法で、香料を一つずつ試します。香料によって、石けんにとろみをつけるもの、薄くするもの、濁らせるものがあるからです。薄くなるのには、もっともらしい原因があります。オレイン酸カリウムの研究では、炭化水素を加えるとひも状のミセルが球状に戻り、粘度が最大で四〜五桁下がりました。最初は仕上がった石けんの0.5〜1%で香りをつけ(Classic Bells。Fisherは2%まで使います)、上限については香りづけのガイドを参照してください。
希釈した石けんを清潔に保つ
ペーストは約三分の二が石けんで、ふたをした瓶でよく保存できます。希釈した石けんは五分の四が水で、大部分が水のものは、細菌やカビが入り込むと増殖する可能性があります。液体石けんのディスペンサーの研究は、それがいかに簡単に起こるかを示しています。公衆トイレの詰め替え式ディスペンサーの約四つに一つが汚染されていることがわかっており、ある小学校では、そうしたディスペンサーの石けんで手を洗うと、児童と職員の手のグラム陰性菌が26倍に増えました(Zapkaら)。ドイツのホテルでは、詰め替え式のポンプディスペンサーの70%が汚染されていたのに対し、詰め替え式でないものは11%で、侵入経路はポンプの圧力開放部だとわかりました(Lucassenら)。どちらの研究も手作りのカリ石けんを対象としたものではありません。本物の石けんはある程度自ら防腐しますが、薄めるほどその力は弱まり(Classic Bells)、高いpHは防腐剤の代わりにはなりません。
- 希釈には精製水だけを使います。はちみつ、アロエ、牛乳、ビールなど、糖、デンプン、タンパク質を含むものは微生物のえさになります(Classic Bells)。
- ボトルとポンプは、詰める前に洗って乾かします。半分残ったボトルに継ぎ足すことは絶対にしないでください。空にして洗い、詰め直します。
- ペーストのまま保存し、少しずつ希釈します。
- 液体石けんを販売するなら、pH 9〜10で効く防腐剤が必要ですが、そうした防腐剤は多くないので、仕入先が示すpH範囲を確認してください。効果を示すには、仕上がった石けんでチャレンジテスト(保存効力試験)を行います。EUと英国でそれに何が必要かは、安全性評価のガイドで説明しています。
固形石けんを削って水に溶かすのは別物
「天然の液体石けん」として紹介されているレシピの多くは、市販の固形石けんを削って熱湯に入れるか、市販の液体石けんを薄めるものです。これは石けんを作るのではなく他人の石けんを溶かしているだけで、ナトリウム石けんはきれいに溶けたままではいてくれません。Classic Bellsはそうした混合物を試し、数日から一、二週間は使えたものの、その後とろみが変わっていくことを確認しました。Grossoの場合は、ぬるぬるべたべたした混合物がほとんどすぐに分離し、乾いて固い膜になりました。注げる状態が続く石けんはカリ石けんでなければならず、そのためにはペーストを作る必要があります。
一部だけ希釈した、あるいはまったく希釈しないカリ石けんは、ソフトソープやクリームソープの仲間で、クリームソープのガイドで扱っています。
試してみたいレシピ
すべてのレシピ出典
これらの出典に関する注記は英語のページにあります。各文書と照合したときの文言のまま掲載しています。
- The Complete Photo Guide to Soap Making . David Fisher, Creative Publishing International , 2018.
- The Everything Soapmaking Book, 3rd edition . Alicia Grosso, Adams Media , 2013.
- Soap-Making Manual . E. G. Thomssen, D. Van Nostrand Company , 1922.
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