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中級 石けんの科学 2分で読めます 更新日

オリジナルの石けんレシピの作り方:目的、脂肪酸、油脂の順に決める

石けんの設計は短いループです。目的、脂肪酸、油脂、計算ツール、そして一度に一つだけの変更。このガイドでは、実際の数値でこのループを三回たどります。

紫の背景に、少しずつ色合いの違うクリーム色の切りたての石けんを低く三つに積んだものと、オリーブオイルの水差し、ココナッツオイルを入れた皿、シアバターのかたまり

要点

  • まず石けんを何に使うかを決め、次にその目的に合う脂肪酸を決めます。油脂を選ぶのはそのあとです。
  • ラウリン酸系の油脂が洗浄力を決め、ココナッツオイル10%ごとに約七ポイント上がります。固形の油脂が硬さを決め、ひまし油は5〜10%で泡を加え、液体の油が残りを埋めます。
  • 下書きはそのたびに計算ツールで確かめます。特性値が目的に合っているか、保存性のためのヨウ素価と多価不飽和脂肪酸の割合、そしてスーパーファットの不確かさの幅です。
  • 一度に変えるのは一つだけにして、どの版も残しておきます。どの変更が何をもたらしたかがわかるようにするためです。
  • 高価なオイルを10%入れても、数値はほとんど動きません。選ぶならほかの理由で選ぶか、選ばないことです。
このページの内容

石けんのレシピは油脂のリストですが、油脂は手段にすぎません。石けんの性質を決めるのは油脂が持ち込む脂肪酸で、どの脂肪酸がほしいかを決めるのは、その石けんを何に使うかです。このガイドはこの順に進み、最後に三つの設計を計算ツールで最後までたどります。

まず、ほかの人が試したレシピを作る

WatsonがSmart Soapmakingで指摘していることは、真剣に受け止める価値があります。失敗するバッチの多くは、うまくいくレシピを一つも作らないうちにレシピを設計しようとする人から生まれる、というのです。石けんを作ることと石けんを設計することは別の技能で、両方を同時に覚えようとすると、配合の問題と技術の問題を見分けられなくなります。当サイトのオリーブ・ココナッツ・パームの定番石けんのような試されたレシピを、作業が退屈に感じるまで作ってください。それから変えます。

石けんの目的から始める

この先の判断はすべて、一つの問いから出てきます。この石けんに何をさせたいのか、です。下の表は、よくある目的について当サイトのレシピがどのあたりにあるかを示しています。出発点として使ってください。

目的 大事なこと 当サイトのレシピの範囲
普段使いの手と体の石けん 濡れたソープディッシュでも長持ちし、すぐに泡立ち、肌を乾燥させない ラウリン酸系の油脂20〜30%、固形の油脂25〜45%、ひまし油0〜10%、スーパーファット5〜6%(オリーブ・ココナッツ・パームの定番石けん)
やさしく洗浄力の低い石けん ラウリン酸が少ない。マイルドで、ゆっくり立つ泡 ラウリン酸系の油脂0〜12%、主にオリーブオイルなどのオレイン酸の多い油、ひまし油5〜10%、スーパーファット7〜8%(無香料のベビー石けん)
長持ちするシャワー用の石けん 硬さ。溶けにくいこと 牛脂、ラード、パーム油を約45%、ラウリン酸系の油脂25%、ひまし油5%
家庭用・洗濯用 最大限の洗浄力 ラウリン酸系の油脂50〜100%、スーパーファット0〜2%(食器・台所用の石けん、洗濯石けん)
ソルトバー 大量の塩に負けない泡 ラウリン酸系の油脂60〜80%、スーパーファット15〜18%(ソルトバー)

当サイトのレシピから。髪用、シェービング用、液体石けんには、それぞれ別のガイドがあります。

目的から脂肪酸へ

それぞれの脂肪酸の働きは脂肪酸のガイドで説明しています。設計では、四つのグループがほぼすべてを担います。

ラウリン酸とミリスチン酸が洗浄力を決めます。ココナッツオイル、ババスオイル、パーム核油は、どれもラウリン酸とミリスチン酸を合わせて約三分の二を占めるので、どれか一つを10%加えるごとに洗浄力が約7ポイント上がります。したがって、一般的な範囲の12〜22は、ラウリン酸系の油脂でおよそ20〜30%にあたります。それより多いと洗浄力が強くなり、肌を乾燥させることがあります。純粋なラウリン酸ナトリウムはそれだけで肌を刺激し、ブレンドに含まれるほかの鎖長の石けんのほうがやさしいのです。

パルミチン酸とステアリン酸が硬さと石けんの持ちを決めます。パーム油、牛脂、ラード、カカオバター、シアバターがこれらを含み、どれも自分の配合率のおよそ半分を硬さに加えます。カカオバターはそれより少し多く、ラードは少し少なめです。パーム油25%なら約12ポイントです。Watsonの目安は、ブレンドの少なくとも40%を固形の油脂にすることで、これらの油脂とラウリン酸系の油脂を合わせて満たします。

ひまし油は泡を支えます。85〜92%がリシノール酸で、ひまし油を5%加えるごとに、泡立ち、クリーミーな泡、コンディショニングがそろって約4ポイント上がります。たいていのレシピは5〜10%で、それよりずっと多いとべたつく石けんになります。

液体の油が残りを埋め、その種類が保存性を決めます。オリーブオイル、ハイオレイックひまわり油、アボカドオイル、マカダミアナッツオイルのようなオレイン酸の多い油は長持ちします。ひまわり油、大豆油、ヘンプシードオイル、亜麻仁油のようなリノール酸やリノレン酸の多い油は、やわらかく、早く酸敗する石けんになります。少ない割合にとどめてください。理由はヨウ素価のガイドで説明しています。

Cableは、新しい設計を三つの土台、つまり固形の油脂、液体の油、ラウリン酸系の油脂から始め、ほかの油脂はあとから重ねていくことをすすめています。最初の下書きを、理解できるくらい単純に保つよい方法です。

石けんの特性の計算に使う8種類の脂肪酸ラウリン酸(炭素数12)、ミリスチン酸(14)、パルミチン酸(16)、ステアリン酸(18)は飽和脂肪酸で、硬さに寄与します。ラウリン酸とミリスチン酸は洗浄力と泡立ちにも、パルミチン酸とステアリン酸はクリーミーな泡にも寄与します。リシノール酸(炭素数18、二重結合1つ、ヒドロキシ基1つ)は、コンディショニング(保湿力)、泡立ち、クリーミーな泡に寄与します。オレイン酸(二重結合1つ)、リノール酸(2つ)、リノレン酸(3つ)はコンディショニングに寄与します。脂肪酸炭素鎖(縮尺どおり。二重結合は二本線)寄与する特性ラウリン酸C12:0硬さ洗浄力泡立ちミリスチン酸C14:0硬さ洗浄力泡立ちパルミチン酸C16:0硬さクリーミーステアリン酸C18:0硬さクリーミーリシノール酸C18:1 · 12-OHOH泡立ちクリーミー保湿力オレイン酸C18:1保湿力リノール酸C18:2保湿力リノレン酸C18:3保湿力飽和した鎖はまっすぐで、密に詰まるため硬い石けんになります。二重結合は一つごとに鎖を曲げ、酸素に攻撃される部位にもなります。そのため石けんはマイルドでコンディショニング効果が高い一方、柔らかく、早く酸敗します。これらの特性は慣例であり、測定値ではありません。
設計の軸になる四つのグループ。洗浄力のラウリン酸とミリスチン酸、硬さのパルミチン酸とステアリン酸、泡のリシノール酸、そしてマイルドさのC18の不飽和脂肪酸。

計算ツールで下書きを確かめる

油脂を割合(%)で入力し、スーパーファットと水を設定して、結果を次の順に読みます。

  1. 特性値を目的と照らし合わせる。網かけの帯は慣例です。洗浄力の低い石けんなら、洗浄力の帯より下にあるのが当然です。それぞれの数値が、目的に必要なところにあるかを考えます。
  2. 保存性。ヨウ素価を確かめ、もっと直接には、脂肪酸組成のリノール酸とリノレン酸の割合を確かめます。
  3. 不確かさの幅。「この数値はどこまで確かか」を開きます。最悪の場合のスーパーファットがゼロに近ければ、スーパーファットを上げるか、範囲がいちばん広い油脂について仕入先に分析証明書を求めてください。理由は鹸化価のガイドで説明しています。
  4. 警告と作り方。水が多すぎて薄い苛性ソーダ水溶液、苛性ソーダを消費する添加物、上限に達した香料。計算ツールはこうしたものに印を付け、作り方には作業の順序が並びます。

特性値が範囲から外れると、計算ツールは置き換えを提案します。ある油脂を同じ重さの別の油脂に替えるもので、ここで在庫を管理していれば在庫から、そうでなければデータベースのすべての油脂から、範囲に近いものから順に挙げます。置き換えると、苛性ソーダは計算し直されます。提案は慣例の範囲に照らして油脂を並べているだけなので、作り手の目で判断してください。候補のなかには、鍋の中でまったく違う振る舞いをする遊離脂肪酸や硬化油もあれば、数値に異論のある油脂もあり、並び順は価格も香りも考えていません。洗浄力の低い石けんのように、一般的な範囲がその石けんの目標として間違っている場合は、Makerアカウントで自分の範囲を目標値として保存でき、置き換えの提案はそちらを目指すようになります。

三つの設計例

三つとも油脂1000 gの場合です。苛性ソーダと水の量は計算ツールの数値です。

1. 普段使いの石けんを、よりやさしく

出発点は40/30/30の石けんです。オリーブオイル400 g、ココナッツオイル300 g、パーム油300 gで、スーパーファット5%、33%の苛性ソーダ水溶液にします。水酸化ナトリウム144.1 gと水292.6 gが必要で、硬さ45、洗浄力21、コンディショニング51、泡立ち21、クリーミーな泡25、ヨウ素価52、INS値161です。はじめての石けんとしてよいもので、そのレシピのページにも少し乾燥しやすいとはっきり書いてあります。洗浄力が範囲の上端にあることと合っています。

目的は、同じ石けんを乾燥した手にやさしくすることです。そこでラウリン酸系の油脂を減らします。ココナッツオイルを30%から20%にすると、洗浄力が約7ポイント下がります。これで硬さも下がるので、パーム油は25%までと少しだけ減らし、その差をオリーブオイルに回します。泡を保つためにひまし油を5%加え、スーパーファットを6%に上げます。こうしてできるのが普段使いの石けん(マイルド)です。オリーブオイル500 g、ココナッツオイル200 g、パーム油250 g、ひまし油50 gで、スーパーファット6%、33%の苛性ソーダ水溶液にすると、水酸化ナトリウム137.5 gと水279.1 gが必要です。

数値 40/30/30 やさしくした版
硬さ 45 37
洗浄力 21 14
コンディショニング 51 60
泡立ち / クリーミーな泡 21 / 25 18 / 27
ヨウ素価 / INS値 52 / 161 61 / 144
スーパーファット(最悪〜最良の場合) 1.4〜8.4% 2.6〜9.2%

変更で狙ったことは、すべて数値に表れています。洗浄力が下がり、コンディショニングが上がり、泡はひまし油で保たれ、硬さは少し下がり、スーパーファットの余裕が広がりました。

やさしくした石けんを試す。オリーブオイル500 g、ココナッツオイル200 g、パーム油250 g、ひまし油50 gでスーパーファット6%なら、水酸化ナトリウム137.5 g、洗浄力14です。

計算ツールで開く

2. 洗浄力の低い石けん

目的は、普通の石けんで乾燥を感じる人のための石けんです。レシピの上では、これはラウリン酸の上限になります。組成を表すもので、医学的な効能をうたうものではありません。ラウリン酸系の油脂は10%に抑えます。オリーブオイル550 g、シアバター200 g、ココナッツオイル100 g、米ぬか油100 g、ひまし油50 gで、スーパーファット8%、33%の苛性ソーダ水溶液にします。計算ツールによると、水酸化ナトリウム127.7 gと水259.2 gで、硬さ28、洗浄力7、コンディショニング69、泡立ち11、クリーミーな泡26、ヨウ素価72、INS値122です。

七つの数値のうち五つが一般的な範囲の外にありますが、これは意図したものです。置き換えの欄は、米ぬか油の代わりにババスオイルなどのラウリン酸系の油脂を入れるといった、すべての数値を範囲に引き戻す方法を提案してきますが、どれも設計を台無しにします。目標値はこういうときのためにあります。たとえば洗浄力を5〜10とし、判断に使うつもりのない数値は空欄にした目標値なら、レシピをその目的に照らして測れます。

この設計から生じることが二つあり、あらかじめ考えておく価値があります。オリーブオイルが55%で硬さが低いので、石けんはやわらかい期間が長く、判断する前に熟成期間を十分にとる必要があります。また、油脂の公表された鹸化価の範囲全体では、計算ツールはスーパーファットを、名目8%に対して5.1%から11.0%のどこかと表示します。分析証明書が最も役に立つのは、いちばん多く入っている油脂です。オリーブオイルの実測値があれば範囲は6.7〜9.6%に狭まりますが、シアバターの実測値では5.4〜10.4%にしかなりません。

範囲が動くのを見る。洗浄力の低い石けんには水酸化ナトリウム127.7 gが必要です。「分析証明書(CoA)の実測値」にオリーブオイルの実測の鹸化価を入力すると、スーパーファットの範囲が狭まるのがわかります。

計算ツールで開く

3. 贅沢な石けんと、その贅沢で得られるもの

贅沢な石けんはお金をかけた石けんです。オリーブオイル300 g、シアバター200 g、アボカドオイル150 g、ココナッツオイル150 g、アルガンオイル100 g、ひまし油50 g、マカダミアナッツオイル50 gで、スーパーファット8%、33%の苛性ソーダ水溶液にします。水酸化ナトリウム129.9 gと水263.6 gが必要で、硬さ32、洗浄力10、コンディショニング64、泡立ち15、クリーミーな泡26、ヨウ素価68、INS値130です。

では、アボカド、アルガン、マカダミアをオリーブオイルに置き換えてみます。オリーブオイル600 g、シアバター200 g、ココナッツオイル150 g、ひまし油50 gです。この版でも水酸化ナトリウムは同じ129.9 gで、硬さ31、洗浄力10、コンディショニング66、泡立ち15、クリーミーな泡25、ヨウ素価67、INS値131です。どの数値も差は二ポイント以内です。アボカドオイル、アルガンオイル、マカダミアナッツオイルは、オリーブオイルと同じく大部分が不飽和脂肪酸なので、脂肪酸の数値の上では、数倍の値段のオリーブオイルとして振る舞います。脂肪酸以外にもたらすもの、たとえば不鹸化物やラベルに書ける物語は、これらの数値には表れません。だからこそ、意図して選び、正直に説明すべきなのです。

ここでも置き換えの欄は意見を出します。洗浄力10とINS値130は範囲より低く、最初の提案はアルガンオイルの代わりにババスオイルを入れることで、洗浄力は17、INS値は144になります。採用するかどうかは目的しだいです。リッチでやさしい石けんなら、洗浄力が低いことこそ望んでいたことかもしれません。

改良を重ねる

  • 一度に変えるのは一つだけ。一つのバッチで二つ変えると、どちらが効いたのか推測するしかありません。
  • すべての版を残す。コピーしたリンクはレシピをそのまま残します。保存したレシピは版を保持し、Makerアカウントではそれぞれの版と、版の間で何が変わったかを見られます。
  • 試作のバッチは小さく。油脂500 gで十分です。判断する前に十分に熟成させてください。二週間でやわらかい石けんが、六週間でよい石けんになることもあります。
  • 量ったものだけでなく、気づいたことも書き留める。泡、使用感、ソープディッシュで石けんがどう減っていったか。こうしたメモこそが、数値が代わりに表している証拠です。

化学は計算ツールが受け持ち、判断するのは作り手です。どの設計でも決めなければならないもう二つの設定については、スーパーファットのガイドと水のガイドで扱っています。

試してみたいレシピ

すべてのレシピ

出典

これらの出典に関する注記は英語のページにあります。各文書と照合したときの文言のまま掲載しています。

  1. Smart Soapmaking: The Simple Guide to Making Traditional Handmade Soap . Anne L. Watson, Shepard Publications , 2013.
  2. The Natural Soap Making Book for Beginners . Kelly Cable, Althea Press , 2017.
  3. Standard for Named Vegetable Oils (CXS 210-1999) . Codex Alimentarius Commission (FAO/WHO) .
  4. Standard for Named Animal Fats (CXS 211-1999) . Codex Alimentarius Commission (FAO/WHO) .
  5. Triterpene alcohol and fatty acid composition of shea nuts from seven African countries . Akihisa T. et al., Journal of Oleo Science 59(7) , 2010.
  6. Irritancy testing of sodium laurate and other anionic detergents using an open exposure model . Tupker R. A. et al., Skin Research and Technology 3(2) , 1997.