要点
- カスティールとは、オリーブオイルだけで作った石けんのことです。今日カスティールとして売られている液体石けんの多くは、何種類かの油脂で作ったカリ石けんです。
- オリーブオイルは大部分がオレイン酸で、生地にとろみをつけ、熟成の浅い石けんを固くする飽和脂肪酸が少ないため、カスティールはトレースが遅く、最初は柔らかい石けんになります。
- 熟成の浅いうちは、泡が少なく、クリーミーで、ぬるぬるします。少なくとも六か月熟成させてください。その後も良くなり続けます。
- 特性値が柔らかすぎると判定するのは、飽和脂肪酸だけを硬さとして数えるからで、熟成も見ることができません。
- 水を減らすこと、少量の乳酸ナトリウムか塩、型出しまで辛抱することが助けになります。
- オリーブオイルはどの等級でもカスティールになります。ポマスオイルはトレースが早く、不鹸化物が多いことがよくある説明です。
カスティール石けんは、いちばん簡素な石けんです。オリーブオイルと水酸化ナトリウムと水だけでできています。そして、はじめて作る人をいちばん驚かせる石けんでもあります。トレースまでに長い時間がかかり、ほかの石けんが切れるころになってもまだ柔らかく、熟成の浅い石けんは手の中でぬるぬるし、計算ツールの特性値は失敗の一覧のように見えます。そのどれも、何かがうまくいかなかったことを意味してはいません。このガイドでは、カスティール石けんがなぜそうなるのか、何が助けになるのかを説明し、計算ツールの数値を付けたレシピを紹介します。
「カスティール」の意味
カスティール石けんは、オリーブオイルだけを水酸化ナトリウムで鹸化した石けんで、固形の石けんです。名前は古く、十五世紀には英語に「castell sope」、つまりスペインのカスティーリャの石けんという言葉があり、その名前は広まっていきました。1911年のEncyclopaedia Britannicaでも、同じもの、つまりオリーブオイルで作った石けんを「Castile soap」とも「Marseilles soap」とも呼んでいます。
店頭では、この言葉は今ではもっとゆるい意味で使われています。カスティールとして売られている液体石けんの多くは、何種類かの植物油で作ったカリ石けんです。その中でもっともよく知られた製品は、成分の最初に水、ココナッツオイル、水酸化カリウムを挙げ、次にパーム油が続き、オリーブオイルは五番目です。このガイドで扱う石けんとは別の石けんです。このサイトでは、カスティール石けんのレシピと同じく、カスティールとはオリーブオイルだけで、ほかには何も使わない石けんを指します。
バスティールは、大部分がオリーブオイルで、泡立ちのために何か、たいていはココナッツオイルかひまし油を加えた石けんを指す、作り手の間での呼び名です。はっきりした線引きはありません。よく知られたある本はオリーブオイル60%で線を引き、多くの作り手は70%以上としています。このサイトのバスティール石けんはオリーブオイル80%とココナッツオイル20%で、オリーブオイル多めのバスティール石けんはオリーブオイル75%にココナッツオイルとひまし油を加えたもので、作り方を最後まで書いてあります。伝統的な親戚にあたるアレッポ、ナーブルス、マルセイユの石けんには、別のガイドがあります。
カスティール石けんがこうなる理由
カスティール石けんの変わったところは、すべてオリーブオイルの組成から来ています。Codex規格によれば、オリーブオイルはオレイン酸が55〜83%で、これは炭素18個の鎖に折れ曲がりが一つある脂肪酸です。飽和脂肪酸(パルミチン酸とステアリン酸)は約8〜25%しかありません。ココナッツオイルがもたらすラウリン酸とミリスチン酸は、ほとんど含みません。
トレースが遅い。トレースとは、石けんができるにつれて生地にとろみがつくことです。早い段階で生地を固め、とろみをつけるのはパルミチン酸とステアリン酸の飽和石けんで、オリーブオイルにはそれが少ないため、カスティールの生地は長い間さらさらのままです。短く区切って混ぜ、混ぜ続けてください。ココナッツオイルやパーム油の入ったレシピよりはっきりと時間がかかり、パワーのあるスティックブレンダーを使うと待ち時間が短くなります。油脂と苛性ソーダ水溶液の温度が高いほど、トレースも早く来ます。
よくある失敗は、混ぜるのがいつまでも終わらないように思えて、乳化の段階で止めてしまうことです。生地はなめらかで均一に見えても、まだとろみはついていません。
型から出すときに柔らかい。オリーブオイルだけの石けんは、型から出してきれいに切れる固さになるまで、型の中で少なくとも48時間、多くはそれ以上かかります。
熟成の浅い石けんはぬるぬるする。カスティールの泡は少なくクリーミーで、泡粒はとても細かく、ふんわりした泡はほとんど立ちません。熟成の浅い石けんでは、その泡が厚ぼったく、ぬめりに近い感触になります。カスティールの評判を作ったのはこの感触で、最初の数週間がいちばん強く出ます。
長い熟成が必要。ほとんどの石けんは四〜六週間で熟成しますが、カスティールが完全に硬くなるには最大で六か月かかることがあります。オレイン酸の多い石けんは、通常の熟成期間を過ぎてもずっと良くなり続けます。石けんは硬くなり、浴室で長持ちするようになり、作り手たちは、ぬるぬるした感触も薄れていくと言います。ときどき石けんを一つ量ってみてください。まだ重さが減っているうちは、まだ熟成中です。やり方は熟成のガイドで説明しています。
数値がカスティールを悪い石けんと判定する理由
計算ツールにオリーブオイル100%を入れると、ほとんどすべての特性値が目安の範囲から外れます。
| 数値 | カスティール | 一般的な範囲 |
|---|---|---|
| 硬さ | 17 | 29〜54 |
| 洗浄力 | 0 | 12〜22 |
| コンディショニング | 82 | 44〜69 |
| 泡立ち | 0 | 14〜46 |
| クリーミーな泡 | 17 | 16〜48 |
| ヨウ素価 | 85 | 41〜70 |
| INS値 | 106 | 136〜165 |
このサイトの計算ツールにオリーブオイル100%を入れた値です。範囲は作り手の間の慣習で、測定値ではありません。
理由は、これらの数値の作り方にあります。「硬さ」は四つの飽和脂肪酸(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸)の合計なので、オリーブオイルの大部分を占めるオレイン酸はまったく数えられません。これらの数値はできたての石けんを脂肪酸で表すもので、熟成期間も、水分も、乾くにつれて石けんの構造が変わることも見えません。六か月たったカスティールは、表が何と言おうと、手に持つと硬い石けんです。これは表の限界で、脂肪酸のガイドで詳しく説明しています。歴史的な石けんの成績も似たようなものです。WattとThomssenのレシピが今日の特性値でどう評価されるか (英語)をご覧ください。
それでも、この表はそれなりに役に立ちます。このサイトのバスティール石けんのように油脂の五分の一をココナッツオイルに替えると、硬さは29、洗浄力は14、泡立ちは14に上がります。どれも範囲にぎりぎり入り、なじみのある泡の石けんになります。
うまく作るための工夫
水を減らす。水を減らすと乾燥にかかる時間が短くなり、トレースが早まります。どちらもカスティールに必要なことで、カスティールで起こる唯一の本当の失敗も防げます。Kevin Dunnは、オリーブオイルだけの石けんを三種類の濃度で作り、スティックブレンダーではなく振って混ぜました。トレースしたのは50%の水溶液だけで、薄いほうのバッチは型の中で分離し、遊離した油の層の下に、苛性ソーダの多いチョークのような層ができました。トレースを早めるためにクローブの精油を加えると固まりましたが、いちばん薄い25%のものはそれでも分離しました。スティックブレンダーは振ったボトルよりはるかによく混ざりますが、傾向は変わりません。レシピによって使う水の量は違うので、オリーブオイル1000 g、スーパーファット5%での選択肢を計算ツールで示します。
| 水の設定 | 苛性ソーダ水溶液 | 水 |
|---|---|---|
| 油脂量の38%(昔からの「フルウォーター」の習慣) | 25.3% | 380.0 g |
| 計算ツールの初期設定、このサイトのレシピページ | 33% | 261.2 g |
| より濃い水溶液 | 38% | 209.9 g |
水酸化ナトリウムはどの行も128.7 gです。計算ツールは25%未満の水溶液を薄いと表示し、40%を超えると警告します。そこではトレースが早く来て、石けんがぼろぼろになることがあります。
乳酸ナトリウム。油脂454 g(1 lb)あたり小さじ一杯を、冷めた苛性ソーダ水溶液に混ぜると、石けんが早く硬くなり、型出しも楽になります。オリーブオイル1000 gなら、一般的な60%溶液で14.5 gです。多ければよいわけではありません。入れすぎると、もろくぼろぼろの石けんになります。
塩。油脂454 gあたり小さじ半分を、苛性ソーダを入れる前に水に溶かしておくと、これも石けんを硬くします。油脂1000 gなら6.6 gです。塩は泡を減らし、カスティールの泡にはもともと余裕がないので、最初はどちらか一方だけを使ってください。
辛抱する。石けんは型の中で丸48時間以上置いてください。柔らかい石けんがいちばん離れにくいのはシリコン型で、乳酸ナトリウムと水を減らすことがいちばん効くのもシリコン型です。張りついたローフを出すこつは型出しのガイドにあります。
どのオリーブオイルを使うか
どの等級でもカスティールは作れます。エクストラバージンオイルは必要なく、等級よりも新鮮さと信頼できる仕入先のほうが大事です。等級はCodex規格が定めています。
| 等級 | どんなものか | 遊離酸度の上限 |
|---|---|---|
| エクストラバージンオリーブオイル | 果実を搾ったもの。精製していない | 0.8% |
| バージンオリーブオイル | 果実を搾ったもの。精製していない | 2.0% |
| 精製オリーブオイル | バージンオイルを精製したもの | 0.3% |
| オリーブオイル | 精製オイルとバージンオイルのブレンド | 1.0% |
| オリーブポマスオイル | 搾りかすから溶剤で抽出し、精製してバージンオイルとブレンドしたもの | 1.0% |
オリーブオイルおよびオリーブポマスオイルのCodex規格(CXS 33-1981)より。遊離酸度はオレイン酸として測定します。
エクストラバージンオイルを使うと石けんは緑がかり、値段も高くなります。色の淡いオイルほど石けんの色も淡くなりますが、オリーブオイル本来の色があるので、真っ白なカスティールにするのは難しいでしょう。
ポマスオイルはいちばん安い等級で、作り手の間ではトレースが早いと言われています。よくある説明は不鹸化物、つまり油脂のうち苛性ソーダが石けんに変えられない部分です。Codexはオリーブポマスオイルに30 g/kgまで認めていて、オリーブオイルの15 g/kgより多く、ポマスオイルはロウ分も多く含みます。苛性ソーダに触れたとたんに反応する遊離脂肪酸のせいにされることもありますが、それでは店頭のポマスオイルを説明できません。Codexはその遊離酸度を1%までとしていて、バージンオリーブオイルの2%より低いからです。ポマスオイルのトレースがなぜ早いのかは、はっきりしていません。石けんとしてはまったく問題ありません。トレースを早くしたいときはポマスオイルを、デザインのために時間がほしいときはバージンオイルを使ってください。
ポマスオイルはオリーブオイルより必要な苛性ソーダがわずかに少ないので、計算ツールには別の項目があります。スーパーファット5%で1000 gなら、オリーブオイルは水酸化ナトリウム128.7 gですが、ポマスオイルは127.0 gです。実際に手元にあるオイルを選んでください。
カスティール石けんのレシピ
| 材料 | 1000 gのバッチ | 500 gのバッチ |
|---|---|---|
| オリーブオイル | 1000 g | 500 g |
| 水酸化ナトリウム | 128.7 g | 64.3 g |
| 水 | 261.2 g | 130.6 g |
| 乳酸ナトリウム、60%(任意) | 14.5 g | 7.2 g |
| 塩(任意) | 6.6 g | 3.3 g |
計算ツールより。スーパーファット5%、苛性ソーダ濃度33%。乳酸ナトリウムを計算ツールに入力すると、乳酸ナトリウムに含まれる水分も数に入れるので、1000 gのバッチの水は255.4 gに減ります。
カスティール石けんを作る。オリーブオイル1000 gにスーパーファット5%なら、水酸化ナトリウム128.7 g、初期設定の33%の苛性ソーダ水溶液にすると水261.2 gです。
計算ツールで開く作り方はほかのコールドプロセス石けんと同じですが、違いが三つあります。混ぜるのに時間がかかるつもりでいて、乳化で止めないこと。石けんは型の中で少なくとも48時間置き、まだ柔らかければもっと置くこと。そして、涼しく風通しのよい場所で、ときどき向きを変えながら、少なくとも六か月熟成させることです。春に作ったバッチは秋に使えるようになります。
試してみたいレシピ
すべてのレシピ出典
これらの出典に関する注記は英語のページにあります。各文書と照合したときの文言のまま掲載しています。
- Castile soap . Merriam-Webster Dictionary .
- Soap . Encyclopaedia Britannica, 11th edition (via Wikisource) , 1911.
- Standard for Olive Oils and Olive Pomace Oils (CXS 33-1981) . Codex Alimentarius Commission (FAO/WHO) , 2015.
- Peppermint Pure-Castile Liquid Soap . Dr. Bronner's .
- The Complete Photo Guide to Soap Making . David Fisher, Creative Publishing International , 2018.
- Soap Crafting . Anne-Marie Faiola, Storey Publishing , 2013.
- Pure Soapmaking . Anne-Marie Faiola, Storey Publishing , 2016.
- Milk Soaps . Anne-Marie Faiola, Storey Publishing , 2019.
- Smart Soapmaking . Anne L. Watson, Shepard Publications , 2013.
- The Natural Soap Chef . Heidi Corley Barto, Ulysses Press , 2012.
- Curing soap . Classic Bells, Soapy Stuff .
- The "Water Discount" . Kevin M. Dunn, The Handcrafted SoapMaker (Handcrafted Soapmakers Guild), issue 2008-2 , 2008.