要点
- コールドプロセスのエンベッドは、作ってから一日〜数日のものがいちばん使いやすい状態です。扱えるほど固く、まわりの生地となじむほど新しいからです。
- MPソープのピースは、ジェル化の熱で溶けます。ピースを入れたローフは涼しいところに置き、保温しないでください。
- エンベッドは、にじまない酸化鉄、ウルトラマリン、マイカで色を付け、その分の場所を空けておきます。エンベッド300 gは、石けん生地約300 g分の場所を占めます。
- 表面に凹凸をつけたトップや絞り出しのフロスティングには、ヘビートレースが必要です。ドライフラワーやハーブの多くは表面で茶色くなりますが、カレンデュラは色が残ります。
- ソーダアッシュが最初に現れるのはトップです。覆うかアルコールを軽く吹きかけ、植物素材や乾いたマイカは決してアルコールでびしょぬれにしないでください。
このページの内容
このガイドで扱うデザインは、スワールのように石けんの中を流れるのではなく、石けんの中や上にとどまるものです。スワールより濃い石けん生地、一日以上前からの準備、そして熱と空気がそれにどう影響するかの見通しが必要です。
コールドプロセス石けんのエンベッド
エンベッド(埋め込み)とは、ある石けんの中に入れた別の石けんのかけらです。対照的な色のキューブ、ほかの石けんから切り抜いた形、ピーラーで削ったカール、どの石けんにも通るように入れた長い棒状の石けんなどがあります(当サイトのヘチマ入りの丸い石けんは、その代わりに乾燥ヘチマを一つひとつに通しています)。
一日〜数日前に作っておきます。 Faiolaはカラーブロックのエンベッドを四日以内に型から出し、新しいうちにできるだけ早く使います。Corley Bartoはモザイク用のキューブを一、二日後にカットします。できたての石けんは扱えるほど固く、それでいてまわりの石けん生地となじむほど柔らかいからです。Alicia Grossoはかけらを二、三日前に作ります。「切り分けられるほど固まるには十分長く、上から流した石けんとまだくっつくほどには短い」(“long enough for it to set so that it can be cut into pieces and short enough so it will still bind to the soap poured over it”)期間です。かけらとまわりの石けんには、同じベースのレシピを使います。
にじまない着色料で色を付けます。 酸化鉄、ウルトラマリン、マイカは輪郭が崩れません。染料はエンベッドからベースへにじみ出し、形をぼやけさせます(どれがどちらかは石けんの色付けで扱っています)。あとはコントラストです。Faiolaはブロックを反対の色のベースに入れて、目立たせています。
大きさを決めます。 Corley Bartoは2.5〜4 cm(1〜1½ in)のキューブを使います。Cableは、ほかの石けんから野菜の抜き型で抜いた直径約2.5 cmの花の形を押し込みます。コンフェッティ石けんなら石けんを二個ほどカール状に削り、ナゲット石けんならかけらに切って、約2カップを石けん生地に混ぜ込みます。
生地のとろみを合わせます。 置いた場所にエンベッドをとどめておけるだけの濃さと、まわりのすき間すべてに流れ込めるだけの流動性が必要です。Cableはゆるいプリン状で流し、濃すぎる生地はかけらから離れてすき間を残すと注意しています。LetcavageとHardenは、かけらが沈まないようにナゲット石けんをヘビートレースまで混ぜます。実際には、置いて並べるエンベッドならミディアムトレース、全体に混ぜ込むかけらならそれより少し濃いめです。Grossoはそうしたかけらを、すべての面が覆われるまで石けん生地に混ぜてから流し、箸を通して空気だまりをなくします。
- ベースの層を流します。 ミディアムトレースの生地を、深さ一、二センチほどに流します。
- エンベッドを置きます。 好きな模様に並べ、ベースにそっと押し込みます。型の側面には付けないでください。Anne-Marie Faiolaは、型の側面に触れたエンベッドは仕上がった石けんを割ることがあると注意しています。
- まわりと上にゆっくり流します。 先にすき間を埋め、それから型をしっかり打ち付けて、閉じ込められた空気を浮かせます。何段も入れるなら、Corley Bartoの言うようにラザニアを作るように、層にして繰り返します。
- 飛び出している部分にはテントをかぶせます。 Faiolaは、ローフを覆って保温する前に、突き出たエンベッドを折った厚紙で覆います。
カットしたら、くっつき具合を確かめます。 エンベッドは、切り口で段差もすき間もなく、ぴったり収まっているはずです。目に見えるすき間や、爪が引っかかる縁があれば、そこを生地が埋めきれなかったということで、石けんが減ってくるとかけらが抜け落ちる可能性が高くなります。
しっかりくっついたキューブのエンベッド:切り口と段差がなく、すき間もありません。
エンベッドの分の場所を空ける
エンベッドは、石けん生地の代わりに場所を占めます。できたての石けんはミリリットルあたり約1 gなので、エンベッド300 gは型の約300 mLを埋めます。25 × 9 cmのローフ型に深さ6 cmまで入れる場合(1,350 mL)、残りは石けん生地約1,050 g分です。苛性ソーダ計算ツールの型に合わせて分量を決めるパネルで型を入力し、充填率を生地に残る割合、ここでは78%に設定します。香料3%のパーム不使用の定番石けんなら、油脂は726 gになります。当サイトの緑のキューブのエンベッド石けんはこの方法で計画したもので、一つの計量リストの四分の一をキューブに、四分の三をベースに使います。分量の決め方は型のガイドで説明しています。
コールドプロセスに入れるMPソープのピース
透明なMPソープを使うと、コールドプロセスではできない効果が出せます。たとえばFaiolaのステンドグラスは、鮮やかに色付けした透明な石けんの小さなピースを、淡い色のコールドプロセス石けんの上にのせたものです。うまくいくかどうかは、二つの点で決まります。
ローフをジェル化させないようにします。 MPソープのベースは約49〜54 °C(120〜130 °F)で溶け始め、ジェル化するローフは、型入れしたときの温度より22〜33 °C(40〜60 °F)高くなることがあります。38 °C(100 °F)で型入れすれば60〜71 °Cで、ピースが軟らかくなったり溶けたりするには十分です。Faiolaはステンドグラスのローフを、一、二日、覆いをせず保温もせずに置きます。小さな型と涼しい部屋も役に立ちます(ジェル化)。Grossoは逆に、「確実に一体化させるため」(“to ensure fusion”)に、MPソープのピースのまわりのコールドプロセス石けんを保温します。しかしFaiola自身の見積もりでは、石けんがジェル化するのは60 °C(140 °F)を超えてからで、ピースが軟らかくなり始める温度をとうに超えています。
汗をかきにくいベースを使い、ピースを休ませます。 MPソープには余分なグリセリンが含まれていて、それが空気中の水分を引き寄せ、ピースの表面に水滴がつきます。汗をかきにくい(ロースウェット)ベースは、その量が少なめです。Faiolaはロースウェットのベースを使い、固まったピースを覆わずに24時間置いてからカットし、大きさは1 cm(½ in)以下にします。ピースが沈まずに表面にとどまるよう、コールドプロセスのベースはヘビートレースで流します。
輪郭をくっきりさせたいなら、MPソープはマイカか顔料で色付けします。水溶性の染料はより透明感のあるステンドグラスらしい見た目になりますが、時間とともにまわりの石けんへ移っていきます。ピースに必要な分だけMPソープを用意するには、MPソープ計算ツールが型に合わせてベースの量を出します。溶かし方はMPソープのガイドで扱っています。エンベッドのまわりにMPソープを流し込む場合、Fisherのルールでは、その量は仕上がりの重さからエンベッドの重さを引いた分です。
表面に凹凸をつけたトップ
凹凸のあるトップには、どれもヘビートレース、つまり角が立つ石けん生地が必要です(トレースのガイド)。ローフ全体を濃い生地で流すか、いつものトレースでローフを流し、一部をトップ用に取り分けて、さらに濃くなるまで混ぜます。
- 角(ツノ)。 スプーンの背か小さな泡立て器の先を表面に当て、さっと持ち上げます。当サイトのローズクレイとバラの花びらの石けんのように、全体をたたけばメレンゲのようなトップになります。
- 尾根。 スプーンの背で、長いほうの両側から中央へ生地を寄せて縦長の尾根を作り、Faiolaのようにその上に角を立てていきます。
- うねり。 ケーキにクリームを塗るように、へらで表面を広げます。Cableはこれをフロスティングトップと呼んでいます。
- 波打つ層。 Faiolaは次の色を流す前に、スプーンで各層の表面に凹凸をつけ、層の境目が波打つようにします。
- 山盛り。 Grossoはトップ用の生地をごく濃いトレースの別バッチで作ってローフに沿って盛り、ナイフの背で表面を約6 mm(¼ in)すくっては、小さな角になるよう引き上げます。
- 渦巻き。 Faiolaの「リバーススタンプ」は、長さ25 cm(10 in)のステンレスの針金を4 cm(1½ in)の渦巻きに巻いたものです。表面のすぐ下に押し込んでまっすぐ引き上げると、石けんが渦巻きの形に持ち上がります。トップが緩くて形が残らなければ、五分待ってもう一度試します。
- プチプチ。 粒の小さいプチプチ(気泡緩衝材)を流した表面にそっと押し当て、石けんが固まるまで置いておくと、ハチの巣模様が残ります。Corley Bartoによれば、ソーダアッシュを防ぐ効果もあります。型の底に敷けば代わりに底面に模様がつき、当サイトのはちみつとミツロウの石けんのハチの巣模様はこうして作っています。
トップの上には空間を残します。Faiolaは型を覆う前に、角を立てたトップに折った厚紙をテントのようにかぶせ、ふたやタオルでつぶれないようにします。
トッピング
植物素材の多くは茶色くなります。 ドライフラワーやハーブの多くは、のせたときの色にかかわらず、できたての石けんの上で茶色か黒に変わります。カレンデュラの花びらは色が残る数少ない素材の一つで、当サイトのラベンダーとカレンデュラの石けんのように、温かみのある黄色を保ちます。それ以外は、色ではなく質感と香りのために使います。ローズクレイの石けんにのせたバラの花びらは、濃い茶色になります。石けんに入れる植物素材も参照してください。
押し込みます。 トッピングは表面がまだ柔らかいうちに散らし、手袋をした手でそっと押し込んでくっつけます。のせただけのものは、最初に洗ったときに落ちてしまいます。Faiolaは、粒のままのオーツ麦やレモンピールパウダーのような細かいトッピングは、表面にそっと息を吹きかけて落ち着かせます。
マイカは乾いたまま振りかけます。 茶こしでふるい、表面にそっと息を吹きかけて均一に広げます。
これらにはアルコールを使いません。 Faiolaは、植物素材や振りかけたマイカにはアルコールを吹きかけません。べちゃっとしてしまうからです。こうしたトップでは、代わりに覆いをするか、ローフをジェル化させて、ソーダアッシュを防ぎます。
毎日使う石けんでは、トッピングは控えめにします。どれも使ううちに洗い流され、なかには途中で肌をこするものもあるからです。
絞り出しのフロスティングとカップケーキ石けん
カップケーキ石けんは、二つのバッチでできています。カップケーキ型に入れたケーキ部分と、その上に絞り出す固いフロスティングです。
ケーキ部分。 ふつうのレシピを、濃いけれどまだ流せるトレースで、シリコンのカップケーキ型に流します。それぞれの中央をねらって流すと少し盛り上がり、フロスティングがその形に沿ってのります。
フロスティング。 絞った形が崩れないよう、室温で固形の油脂を多く含むレシピが必要です。作り方は二通りあります。
- ヘビートレースのフロスティング。 別に小さなバッチを作り、生地がホイップクリームのように角が立つまで混ぜ続け、当サイトの絞り出しのカップケーキ石けんのように、すぐに絞り出します。
- ホイップしたフロスティング。 Faiolaの方法では、バタークリームのように空気を含ませます。溶かした油脂を、クリーム状に固まる約21 °C(70 °F)まで冷まし、苛性ソーダ水溶液は16 °C(60 °F)まで冷やします。油脂をハンドミキサーかスタンドミキサーで泡立て、冷たい苛性ソーダ水溶液を低速で、ボウルの側面に沿わせて少しずつ加えます。再びふんわりするまで10〜15分泡立て続け、低速で香料を加えてから、中高速でしっかり角が立つまで泡立てます。小分けしたものに、泡立て器で色を付けます。
Faiolaが試したフロスティングは、パーム油10.4 oz、ココナッツオイル5.2 oz、オリーブオイル1.3 ozで、およそ60 : 30 : 10です。この割合に丸め、スーパーファット5%、31%の苛性ソーダ水溶液で当サイトの計算ツールに通すと、彼女がカップケーキ12個に使った量に近い油脂480 gのバッチは次のようになります。
カップケーキ12個分の絞り出し用フロスティング。パーム油288 g、ココナッツオイル144 g、オリーブオイル48 gには、水酸化ナトリウム70.1 gと水156 gが必要で、香料を入れる前で約706 gのフロスティングになります。
計算ツールで開くパーム不使用のフロスティングでも、ほかの油脂で同じこと、つまり室温で固形の油脂を大きな割合で含むことが必要です。どんな置き換えも、一ダース分を絞る前に小さなバッチで試してください。
下にある石けんの熱にも注意します。ベースに含まれる糖分で温度が上がり、ホイップしたトッピングが溶けることがあります。そのためFaiolaは、絞り出しのトップをのせるバナナ石けんでは、ベースを27〜32 °C(80〜90 °F)で作り、でき上がったローフを24時間冷凍庫に入れます。
絞り出し。 大きめの星口金を使います。Faiolaはケーキの中央から絞り始め、円を描きながら外側の縁まで広げ、その輪の上を内側へ戻り、最後は中央で絞りながら一度止めて、持ち上げて角を残します。
中央から外へ絞り、内側へ戻って角を立てて仕上げます。
そのあと。 ソーダアッシュを防ぐため、最初の90分のうちに二、三回、フロスティングにアルコールを軽く吹きかけます。カップケーキは二〜四日型に入れたままにし、底まで空気が届くようラックの上で四〜六週間熟成させます。デコレーションには、MPソープのガイドで説明しているホイップしたMPソープも、苛性ソーダを使わない代わりの方法です。
トップにソーダアッシュを出さないために
ソーダアッシュは、できたての石けんの表面に残っている苛性ソーダが、空気中の二酸化炭素と出会うところにできる、白い粉っぽい膜です。害はありませんが、色をくすませ、凹凸のあるトップのくぼみを埋めてしまいます。角や絞り出しのフロスティングは、ソーダアッシュができる表面がいちばん広くなります。詳しくはソーダアッシュのガイドで扱っています。トップについては次のとおりです。
- 平らなトップは覆います。 表面にラップを直接のせれば空気を遮断でき、プチプチなら模様をつけながら同じ効果があります。
- 軽く吹きかけます。 Faiolaは最初の90分間に、91%のイソプロピルアルコールをトップに三回まで吹きかけます。細かい霧にとどめてください。びしょぬれになったトップは乾燥してひび割れることがあります。イソプロピルアルコールは引火性があるので、熱源から十分離れたところで吹きかけてください。
- ジェル化させます。 ジェル化した石けんは、冷たく保った石けんよりソーダアッシュが出にくいので(ジェル化)、覆うことも吹きかけることもできないトップに向いています。
それでも出てしまったソーダアッシュは、仕上がった石けんから洗い流すか、蒸気で取り除けます。
試してみたいレシピ
すべてのレシピ出典
これらの出典に関する注記は英語のページにあります。各文書と照合したときの文言のまま掲載しています。
- Soap Crafting: Step-by-Step Techniques for Making 31 Unique Cold-Process Soaps . Anne-Marie Faiola, Storey Publishing , 2013.
- The Complete Photo Guide to Soap Making . David Fisher, Creative Publishing International , 2018.
- Pure Soapmaking . Anne-Marie Faiola, Storey Publishing , 2016.
- The Everything Soapmaking Book, 3rd edition . Alicia Grosso, Adams Media , 2013.
- The Natural Soap Chef . Heidi Corley Barto, Ulysses Press , 2012.
- Natural Soap Making . Elizabeth Letcavage and Melissa Harden, Stackpole Books , 2013.
- The Natural Soap Making Book for Beginners . Kelly Cable, Althea Press , 2017.