要点
- 25erは、オリーブオイル、菜種油、ココナッツオイル、パーム油を25%ずつ配合します。半分が液体の油、半分が固形の脂です。バランスがよく扱いやすいため、ドイツ語圏の本や講座、作り手は、初心者にまずこれを作ってもらいます。
- ドイツ語圏の出典はスーパーファットを6〜10%の幅で設定しています。当サイトは8%を使います。油脂1000 gに水酸化ナトリウム136.7 gと水277.5 gで、四種の油脂がすべて低めに鹸化しても4.6%が未鹸化で残ります。
- 食用として売られている菜種油は低エルカ酸の品種で、計算ツールでは「キャノーラ油」です。高エルカ酸の項目はグラムあたりの苛性ソーダが6.9%少なく、誤って選ぶと25erの8%が9.4%になります。
- 菜種油には、石けんになる脂肪酸のなかで最も早く酸敗するリノレン酸が含まれます。25erのリノール酸とリノレン酸は合わせて14.4%です。油は新しいものを買い、石けんは涼しく暗い場所に保管してください。
- Palminはココナッツの脂で、パーム油ではありません。パーム油なしの25erにするには、パーム油の代わりにシアバター15%とカカオバター10%を入れます。水酸化ナトリウム134.6 gで、ほぼ同じ石けんになります。
- 石けんは四〜六週間熟成させてください。
このページの内容
ドイツの石けん材料店や講座、本で、最初に何を作ればよいか尋ねると、よく返ってくる答えが25er-Rezept、つまり「25のレシピ」です。オリーブオイル25%、菜種油25%、ココナッツオイル25%、パーム油25%。Petra Neumannの『Seife sieden』はこれを本の基本レシピとし、「本当の初心者向けレシピ」と呼んでいます。このガイドでは、それぞれの油脂の働き、ドイツ語圏の出典が使うスーパーファットと当サイトが使うスーパーファット、計算ツールで出した苛性ソーダと水の量、どの菜種油を入力するか、そしてパーム油なしでの作り方を説明します。
25erとは
名前がそのままレシピです。四種の油脂を25%ずつなので、油脂一キログラムなら各250 g、半キロのバッチなら各125 gです。半分が固形の脂(ココナッツオイルとパーム油)、半分が液体の油(オリーブオイルと菜種油)で、ドイツ語圏の作り手は、扱いやすさはこの配分のおかげだと考えています。オーストリアの石けん作家Barbara Freybergerは、仕上がりを「やわらかすぎず、硬すぎない」と表し、石けん生地も長くゆるいままでいることはなく、早く固まりすぎることもないと書いています。Neumannがこれをすすめるのは、幅広い温度で作業できるため、初心者が手順を覚える時間をとれるからです。
どの油脂も、含まれる脂肪酸のために配合されています。脂肪酸については脂肪酸と石けんの特性のガイドで詳しく説明しています。
| 油脂 | おもな脂肪酸 | 石けんにもたらすもの |
|---|---|---|
| オリーブオイル | オレイン酸55〜83% | マイルドさと、ゆっくり立つクリーミーな泡。熟成が終わるまではやわらかい |
| 菜種油 | オレイン酸51〜70%、リノール酸15〜30%、リノレン酸5〜14% | オリーブオイルと同じようなマイルドさ。含まれるリノレン酸は、石けんのなかで最初に酸敗する部分 |
| ココナッツオイル | ラウリン酸45〜53%、ミリスチン酸17〜21% | 洗浄力と、すぐ立つ大きな泡。硬さ |
| パーム油 | パルミチン酸39〜48%、オレイン酸36〜44% | 硬さ、減りにくい石けん、安定したクリーミーな泡 |
脂肪酸の範囲はコーデックス規格によるもので、各油脂のページと同じです。
等分でうまくいくのは、四種のどれも、作り手がふつう配合する割合を超えないからです。Faiolaはパーム油を油脂の25%まで、キャノーラ油を35%までにとどめ、ココナッツオイルは25%を超えると乾燥を感じる人もいると書いています。下の表のとおり、四種を合わせると、七つある特性の目安すべての範囲に収まります。
油脂を買う
Neumannによれば、石けんの基本的な油脂はたいていスーパーマーケットで手に入り、25erの四種もそうです。ココナッツの脂、揚げ物用の油脂として売られているパーム脂、オリーブオイル、菜種油です。このうち二つは、よく確かめる必要があります。
Palminはココナッツの脂です。名前に反して、ココナッツの果肉から作られた100%ココナッツの脂で(Palmin)、ココナッツオイルの四分の一の枠に入ります。Palmin softは別の製品で、パーム油とひまわり油も含んでいます(Palmin)。そのためドイツの作り手は、Palminは使ってよいがPalmin softは使わないように、と言います(Kreativseifen)。Palminをパーム油の代わりに入れると、半分がココナッツオイルの別の石けんになり、25erの水酸化ナトリウム136.7 gでは、油脂の8%ではなく13.9%が未鹸化で残ります。
棒状の揚げ物用油脂はたいていブレンドです。植物性の揚げ物用油脂として売られている棒状の油脂(Fettstange)は、たいていパーム油にほかの油脂を混ぜたものです(Kreativseifen)。たとえばBiskin Reines Pflanzenfettは、パーム脂とココナッツの脂から作られています(Biskin)。計算ツールは入力した油脂でしか計算できず、ココナッツオイルはパーム油よりグラムあたり約29%多くの苛性ソーダを必要とします。ココナッツの脂を含むブレンドをパーム油として入力すると、使い切れる量より少ない苛性ソーダしか割り当てられず、設定したよりスーパーファットが高くなります。液体の油を含むブレンドなら、必要より少し多い苛性ソーダになります。パーム油として売られているパーム油を使えば、推測は要りません。
スーパーファット
スーパーファット(ドイツ語ではÜberfettung)は、わざと鹸化させずに残す油脂の割合です。量る苛性ソーダを、油脂が使える量より数パーセント少なくします(スーパーファットのガイドを参照。日本でよく使う「鹸化率」は、百からこの値を引いた数値です)。ドイツ語圏の出典は、油脂については一致していますが、この点では分かれます。
| 出典 | スーパーファット | 油脂500 gに対する水 | 熟成期間 |
|---|---|---|---|
| Kreativseifen(石けん作家のブログ) | 6%以上。著者自身は11% | 150〜165 g(30〜33%) | 4〜8週間 |
| LandFrauen Althütteの講座資料 | 8% | 168 g | 3〜8週間 |
| Seifenmagieのワークショップ(はじめての石けん向け) | 8〜10% | 記載なし | 4〜6週間 |
| Utopia.de | 約10% | 油脂の約三分の一 | 約4週間 |
| Neumann『Seife sieden』:ラードを使ったパーム油なしの最初の石けん | 10% | 168 g(33%) | 4〜6週間 |
計算ツールの「この数値はどこまで確かか」パネルを見ると、それぞれの選択で何が得られるかがわかります。このパネルは各油脂の公表されている鹸化価の範囲をもとに、油脂が範囲のどちらかの端にあった場合に、量った苛性ソーダが何%のスーパーファットにあたるかを計算します。
| スーパーファット | 油脂1000 gに対する水酸化ナトリウム | 水(33%の苛性ソーダ水溶液) | すべての油脂が範囲の下端にある場合 | すべての油脂が上端にある場合 |
|---|---|---|---|---|
| 5%(計算ツールの初期設定) | 141.1 g | 286.5 g | 1.5% | 8.2% |
| 8% | 136.7 g | 277.5 g | 4.6% | 11.1% |
| 10% | 133.7 g | 271.4 g | 6.7% | 13.1% |
計算ツールによる値。すべての油脂が同時に範囲の同じ端にあると仮定するのは限界を示すためで、起こりそうな場合ではありません。四種のなかで範囲が最も広いのはパーム油で、190〜209 mg KOH/gです。
当サイトが8%を使う理由
5%でも、25erは計算上は問題ありません。四種の油脂がすべて範囲の下端で鹸化しても、油脂の1.5%は未鹸化で残ります。ただ、はじめてのバッチには薄い余裕です。グラム単位で表示するはかりは一グラムずれることがあり、一グラムは、500 gのバッチが5%で必要とする水酸化ナトリウム70.6 gの1.4%にあたります。
8%なら、最悪の場合でも4.6%が残ります。初期設定が計算上約束する5%に近く、はかりの誤差の余地も残ります。後で紹介するパーム油なしの配合では、同じ設定で少なくとも5.2%が残ります。また8%は、Faiolaが一般的な範囲とする3〜8%の内側です。LandFrauenの資料もこの値で、苛性ソーダの量も一致します。各油脂125 gに対して、当サイトは水酸化ナトリウム68.3 g、資料では68.24 gです。
10%でもよい石けんになります。少しやわらかく、遊離した油が多くなります。当サイトがそこまで上げないのは、菜種油があるからです。スーパーファットで残る油は、レシピの油脂を均等に代表するものではありません。Kevin Dunnの試験では、ブレンドのオレイン酸が7%のとき残った油脂には22%、ブレンドのリノール酸が9%のとき17〜19%含まれていました。Dunnはこれを、不飽和の油が苛性ソーダとゆっくり反応するためと考えました。25erの不飽和の油はオリーブオイルと菜種油で、菜種油には、石けんになる脂肪酸のなかで最も早く酸敗するリノレン酸が含まれます。Dunnのオレンジスポットの試験では、苛性ソーダを10%減らしてもオレンジ色が早く出ることはありませんでしたが、色は濃くなりました。
レシピ
| 材料 | 油脂1000 g | 油脂500 g |
|---|---|---|
| オリーブオイル | 250 g | 125 g |
| 菜種油(計算ツールでは「キャノーラ油」) | 250 g | 125 g |
| ココナッツオイル | 250 g | 125 g |
| パーム油 | 250 g | 125 g |
| 水酸化ナトリウム | 136.7 g | 68.3 g |
| 水 | 277.5 g | 138.7 g |
スーパーファット8%、33%の苛性ソーダ水溶液で、計算ツールによる値。香料を入れる前の総重量は、全量のバッチで1414.1 g、半量で707.1 gです。
ドイツのレシピは、水を油脂の重さの約三分の一で量ります。LandFrauenの資料とNeumannの最初の石けんでは、油脂500 gに168 gです。この苛性ソーダ量では29%の水溶液になり、当サイトの計算ツールの初期値は33%です。どちらでも作れます。違いは熟成中に石けんが失わなければならない水の量で、水と苛性ソーダ濃度のガイドで説明しています。
25erを作る。油脂1000 gにスーパーファット8%なら、水酸化ナトリウム136.7 g、33%の苛性ソーダ水溶液にすると水277.5 gです。
計算ツールで開く数値からわかる石けんの性質
| 数値 | 25er | 一般的な目安 |
|---|---|---|
| 硬さ | 38 | 29〜54 |
| 洗浄力 | 17 | 12〜22 |
| コンディショニング | 59 | 44〜69 |
| 泡立ち | 17 | 14〜46 |
| クリーミーな泡 | 21 | 16〜48 |
| ヨウ素価 | 65 | 41〜70 |
| INS値 | 143 | 136〜165 |
計算ツールによる値で、スーパーファットを変えても変わりません。目安の範囲は趣味の計算ツールに共通する慣例で、測定値ではありません。
どの数値も目安の範囲に収まっています。オリーブオイル40%、ココナッツオイル30%、パーム油30%の三種の油脂で作る定番の石けん、当サイトの毎日使いの石けんと比べると、25erはやわらかく(硬さ38対45)、洗浄力はやや低く(17対21)、コンディショニングは高めです(59対51)。ヨウ素価は65対52と高く、これは菜種油の二重結合によるものです。二重結合は石けんをマイルドでやわらかくする一方、日持ちを悪くします。
どの菜種油を選ぶか
菜種油には苛性ソーダの必要量が異なる二つの種類があり、計算ツールでは別々の項目になっています。食用として買った菜種油には、キャノーラ油(低エルカ酸菜種油)を選んでください(当サイトのドイツ語ページではRapsöl)。
菜種は脂肪酸の50%以上がエルカ酸であることもありますが、品種改良で2%未満まで下げられました(BfR)。1974年に菜種からエルカ酸を取り除く育種が行われ、1986年と1987年には、グルコシノレートも少ないダブルロー(00)品種に置き換わりました。いくつかのエルカ酸品種を除き、現在栽培されているのは00品種の菜種だけです(UFOP)。食用に栽培される00品種のエルカ酸はふつう0.5%未満で、ドイツの公的検査では984の菜種油の平均が0.26%でした(BfR)。EUの法律は、菜種油を含め、食品として販売される植物油脂のエルカ酸をキログラムあたり20 g、つまり2%までに制限しています(規則(EU)2023/915)。カナダでは同じ種類の菜種がキャノーラとして売られており、この名前もカナダで作られました。キャノーラと名乗るには、油のエルカ酸が2%未満でなければなりません(Canola Council of Canada)。
当サイトのキャノーラ油はこの油で、低エルカ酸菜種油のコーデックス規格に基づき、鹸化価は182〜193 mg KOH/gです。計算ツールの菜種油(高エルカ酸)は、エルカ酸が2%を超え最大60%の品種で、鹸化価は168〜181 mg KOH/gです。こうした品種は現在、食用ではなく化学工業用にだけ栽培されています(KErn)。エルカ酸は炭素数22の鎖で、食用油の大部分を占める炭素数18の脂肪酸より長いため、高エルカ酸の油はグラムあたりの分子の数が少なく、必要な苛性ソーダも少なくなります(鹸化価のガイドを参照)。
| 計算ツールで選ぶ項目 | 鹸化価(mg KOH/g) | その油だけで1000 g | 25er(油脂1000 g) |
|---|---|---|---|
| キャノーラ油:食用として売られている菜種油 | 182〜193 | 123.0 g | 136.7 g |
| 菜種油(高エルカ酸) | 168〜181 | 114.4 g | 134.5 g |
スーパーファット8%での水酸化ナトリウムの量。計算ツールによる値。
同じ重さで比べると、食用の油は7.4%多くの苛性ソーダを必要とします。菜種油が油脂の四分の一を占める25erでは差は2.2 gで、起こりやすい間違い、つまり名前で「菜種油」を選んでしまう間違いは、安全な側に外れます。スーパーの油を高エルカ酸として入力すると134.5 gになり、8%が9.4%になります。逆に、高エルカ酸の油をキャノーラ油として入力すると6.5%になります。
リノレン酸と石けんの保管
菜種油の5〜14%はリノレン酸です。二重結合を三つ持ち、石けんになる一般的な脂肪酸のなかで最も早く酸化する脂肪酸です(オレンジスポットのガイドを参照)。低温圧搾の低エルカ酸菜種油とバージンオリーブオイルを比べた研究では、菜種油のほうが酸化しやすく、その一因は多価不飽和脂肪酸の割合が高いことでした(Koski et al., 2002)。25erでは菜種油によって、レシピ全体のリノール酸が11.8%、リノレン酸が2.6%になります。合わせて14.4%で、Classic Bellsが経験則として挙げる15%をわずかに下回ります。ただしClassic Bells自身、この経験則に強い科学的根拠はないとしています。オリーブオイルのリノール酸は3.5〜21%と幅があるため、実際のバッチはこの線のどちら側にもなりえます。
これは気をつける理由であって、心配する理由ではありません。役に立つのは、オレンジスポットのガイドが多価不飽和の油を含むすべての石けんについて挙げている対策です。新しい油、精製水、プラスチックかステンレスの道具を使い、石けんは涼しく暗く風通しのよい場所で熟成・保管し、むき出しの金属の上には置かないこと。必要なら、エデト酸四ナトリウムを水に、ローズマリーエキスを新しい油脂に、それぞれ油脂の0.1%加えます。Kevin Dunnが試験した量です。どちらも酸化防止剤とキレート剤のガイドで説明しています。
精製、低温圧搾、ハイオレイック
精製油はたいてい無色か淡い黄色で、低温圧搾油は濃い黄色や緑色のことが多くあります(Verbraucherzentrale)。精製でも低温圧搾でも、食用として売られている菜種油は低エルカ酸で、必要な苛性ソーダは同じです。低温圧搾油は日持ちが短く、未開封で約九〜十二か月、開封後は二か月です。精製油は未開封で最長二年、開封後は六〜八か月です(Verbraucherzentrale)。どちらも、すぐに使い切れる量を買ってください。
ハイオレイック菜種油は、オレイン酸が75%を超え、リノレン酸が5%未満のHOLL品種から採られ(LELF Brandenburg)、食品工業、外食、ファストフードで高温で長時間使う用途向けに売られています(UFOP)。手に入るなら、計算ツールではハイオレイックキャノーラ油の項目を使います。25erに使うと、リノール酸とリノレン酸の合計が14.4%から10.7%に下がり、スーパーファット8%で水酸化ナトリウムは137.2 gです。Faiolaがハイオレイックのキャノーラ油を好むのも同じ理由で、酸敗しにくいからです。
パーム油なしで作る
25erの油脂のうち、いまでは多くのドイツのレシピが代わりを用意しているのはパーム油だけで、その理由は土地です。国連食糧農業機関(FAO)のリモートセンシング調査によると、2000年から2018年にかけて、世界の森林減少の7%はアブラヤシ栽培の拡大が原因でした。ボルネオ島では、2005年から2015年の森林減少の少なくとも半分がアブラヤシに関係していました(IUCN)。同じIUCNの報告書は、ほかの油料作物に切り替えるだけでは解決にならないと警告しています。アブラヤシは同じ面積から、ほかの主要な油料作物の最大九倍の油を生産するからです。ドイツの農業省も同じ見解です。アブラヤシはヘクタールあたり約3.5〜4トンの油がとれる最も収量の多い油料作物で、その油をココナッツや大豆の油に置き換えても問題が移るだけか、かえって悪化しかねないとしています(BMLEH)。
もう一つの道は認証です。持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)は、四つのサプライチェーンモデルでパーム油を認証しています。アイデンティティ・プリザーブドとセグリゲーションは、認証油を通常のパーム油と分けて扱うもの、マスバランスは流通の途中で通常の油と混ぜるもの、クレジットは、油そのものは届かないまま認証を受けた生産者に対価を払うものです。ドイツではForum Nachhaltiges Palmöl(持続可能なパーム油フォーラム)が、産業界、業界団体、NGO、二つの連邦省を集めてこの問題に取り組んでいます。同省が引用する最新の調査の年である2019年には、ドイツでエネルギー部門以外に使われたパーム油の60%弱が認証油でした(BMLEH)。IUCNによると、これまでのところ、認証パーム油が森林減少を防ぐ効果は非認証の油よりわずかに高い程度です。認証パーム油を買う作り手もいれば、使わない作り手もいます。この節の残りは後者のためのもので、パーム油の働きと代わりになる油脂についてはパーム油を使わない石けんのガイドでさらに詳しく説明しています。
ドイツ語圏の出典がパーム油の代わりに使う油脂を、25erそのものに入れて計算すると次のとおりです。
| パーム油の代わりに | 硬さ | 洗浄力 | コンディショニング | クリーミーな泡 | ヨウ素価 | リノール酸とリノレン酸 | 水酸化ナトリウム |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| パーム油25%(25er) | 38 | 17 | 59 | 21 | 65 | 14.4% | 136.7 g |
| シアバター15%、カカオバター10% | 39 | 17 | 58 | 22 | 64 | 13.0% | 134.6 g |
| シアバター25% | 37 | 17 | 59 | 20 | 65 | 13.2% | 134.0 g |
| カカオバター25% | 41 | 17 | 56 | 24 | 61 | 12.7% | 135.6 g |
| ラード25% | 36 | 17 | 60 | 19 | 67 | 14.1% | 136.3 g |
| ココナッツオイル30%、カカオバターとシアバター各10% | 40 | 20 | 56 | 20 | 62 | 12.8% | 137.0 g |
| オリーブオイル50% | 30 | 17 | 66 | 13 | 73 | 14.9% | 135.1 g |
油脂1000 g、スーパーファット8%で、計算ツールによる値。菜種油はどの行も25%、オリーブオイルとココナッツオイルは、行に別の記載がないかぎり25%です。
どの固形の脂でも、硬さは25erとの差が数ポイント以内に戻り、それぞれに合った苛性ソーダの量が必要です。例外は、パーム油の代わりにオリーブオイルだけを使う場合です。
おすすめの置き換え:シアバターとカカオバター
ブレーメン大学の実験用ワークシートが、まさにこのレシピを載せています。オリーブオイル、菜種油、ココナッツオイルを25%ずつ、パーム油の代わりにシアバター15%とカカオバター10%です。Freybergerは同じ二つのバターを各10%にして、ココナッツオイルを少し増やしています。数値で見ると、元のレシピに最も近い置き換えの一つです。硬さ39対38、クリーミーな泡22対21で、リノール酸とリノレン酸は少なくなります。カカオバターは、Faiolaが石けんのひび割れを招くことがあるとする15%を下回り、苛性ソーダの数値の幅が最も大きいシアバターも15%に抑えています。
変わるのは硬さの出どころです。パーム油はパルミチン酸をもたらしますが、二つのバターはその多くをステアリン酸に置き換えます。ステアリン酸の石けんは、一般的な脂肪酸の石けんのなかで最も硬く、最も溶けにくいものです(脂肪酸のガイドを参照)。シアバターには2.4〜11.6%の不鹸化物も含まれ、これはそのまま石けんに残ります(Akihisa et al., 2010)。
ここで挙げた油脂のうち、苛性ソーダの数値が大きくばらつくのは未精製のシアバターだけです。未精製シアバターのコーデックス規格は鹸化価160〜195 mg KOH/gを認めていますが、これは不鹸化物を最大19%含むバターまで対象にしているためです。実測されたバターは179.3〜190の範囲にあり、計算ツールは183を使っています。シアバター15%、スーパーファット8%なら、この差はほとんど問題になりません。鹸化価160のバターでも、油脂の6.4%が未鹸化で残ります。
パーム油なしの25erを作る。オリーブオイル、菜種油、ココナッツオイル各250 gにシアバター150 gとカカオバター100 gを合わせ、スーパーファット8%にすると、水酸化ナトリウム134.6 g、33%の苛性ソーダ水溶液にすると水273.3 gです。油脂500 gなら67.3 gと136.7 gです。
計算ツールで開くほかの置き換え
シアバターだけを25%にすると、数値はほとんど変わらず(硬さ37)、買うバターも一種類ですみます。Utopiaはパーム油の代わりにシアバターをすすめていますが、10〜15%にして、残りはオリーブオイルを増やして補う方法です。シアバター15%、オリーブオイル35%では硬さは34で、25erよりやわらかくなります。
カカオバターだけを25%にすると、表のなかで最も硬い石けんと最もクリーミーな泡になりますが、Faiolaが石けんのひび割れを招くことがあるとする15%を大きく超えます。Kasperはパーム油の分を、三分の二をカカオバター、三分の一をオリーブオイルに振り分けています。この場合カカオバターは16.7%、硬さは37です。
ラード(Schweineschmalz)は、Neumannのパーム油なしの最初の石けんの一つで、パーム油の代わりに使われています。25erではパーム油よりわずかにやわらかい石けんになり(硬さ36)、水酸化ナトリウムは136.3 gです。ヴィーガンではありません。
ココナッツオイルを増やして二つのバターを使うFreybergerの配合では、泡立ちが早く大きくなります。洗浄力20、硬さ40です。このときココナッツオイルはレシピの30%になり、Faiolaが乾燥を感じる人もいるとする25%を超えます。
オリーブオイルだけをパーム油の代わりに使うと、表のなかで最もやわらかい石けんになります。硬さ30、クリーミーな泡は13で目安を下回り、ヨウ素価は73で目安を上回ります。Kasperによれば、こうした石けんはよりマイルドで泡が少なく、熟成を二週間ほど長くすると最もよくなります。
マーガリンもドイツのレシピに登場します。Kasperは苛性ソーダを計算し直す場合にかぎって同量での置き換えを認め、量が多いときはブレンドをすすめています。マーガリンは水分を含み、銘柄によって中身が違うからです。当サイトの計算ツールにはマーガリンの項目がありません。組成が銘柄で変わる油脂には、一つに決まった苛性ソーダの数値を割り当てられないからです。
どれを選んでも、計算し直してください。パーム油の代わりにシアバターとカカオバターを入れて、25erの水酸化ナトリウム136.7 gをそのまま使うと、8%のスーパーファットは6.6%に下がります。
作り方
作り方は通常のコールドプロセス(CP法)です。はじめての石けんのガイドで手順を一つずつ説明しています。その前に苛性ソーダの安全な扱い方を読んでください。25erならではの点がいくつかあります。
- 四種のうち二つは固形の脂です。ココナッツオイルとパーム油をゆっくり溶かしてから、オリーブオイルと菜種油を混ぜ入れます。これで全体の温度が下がります。パーム油は置いておくと容器の中で分離するので、量る前に容器ごと全部溶かしてよく混ぜてください(Faiola)。
- 約32〜43 °Cで合わせます。油脂と苛性ソーダ水溶液は、合わせるときにどちらもこの範囲にあるようにします(Watson)。両方の温度をそろえる必要はありません。25erはこの点で融通がきき、だからこそNeumannは初心者にこれから始めてもらいます。
- ライトトレースまで混ぜます。はじめての石けんのガイドのとおりです。何を目安にするかはトレースのガイドで説明しています。
- 型から出して切ります。一、二日たって、石けんがしっかり固まってからにします。
- 熟成させます。石けんを立てて並べ、周りに空気が通るようにし、直射日光を避け、ときどき向きを変えます。ドイツ語圏の出典で最も多いのは四〜六週間で(Seifenmagie、Neumann、ブレーメン大学)、三〜八週間(LandFrauen)や四〜八週間(Kreativseifen)とするものもあります。熟成が終わったかどうかを石けん一個の重さで見分ける方法は、熟成のガイドで説明しています。
熟成を終えた石けんは涼しく暗い場所に保管し、古いものから使ってください。この石けんで最初に劣化するのは菜種油の部分です。
試してみたいレシピ
すべてのレシピ出典
これらの出典に関する注記は英語のページにあります。各文書と照合したときの文言のまま掲載しています。
- Seife sieden: Grundlagen, Techniken und Rezepte . Petra Neumann, Verlag Eugen Ulmer, 2nd edition , 2023.
- Naturseife, das reine Vergnügen . Claudia Kasper, Freya Verlag , 2020.
- Das 25er Rezept zum Seifensieden . Barbara Freyberger, Seifensieder (Austria) , 2023.
- Seife sieden für den Hausgebrauch: 25er Seifenrezept mit 8 % Überfettung . Simone Schif, talk handout for LandFrauen Althütte .
- Seife sieden für Anfänger: Anleitungen & Checklisten . Jasmin Jonietz, Seifenmagie , 2020.
- Seifenherstellung; Rezeptvorschläge . Kreativseifen (soapmaker's blog) , 2023.
- Seife selber machen: Anleitung mit natürlichen Zutaten . Svenja Dirksen, Utopia.de , 2024.
- Körperseife (worksheet) . Gro Harlem Brundtland Labor, Universität Bremen .
- Palmin Kokosfett . Peter Kölln GmbH & Co. KGaA .
- Palmin soft . Peter Kölln GmbH & Co. KGaA .
- Biskin Reines Pflanzenfett . Peter Kölln GmbH & Co. KGaA .
- Standard for Named Vegetable Oils (CXS 210-1999) . Codex Alimentarius Commission (FAO/WHO) .
- Standard for Olive Oils and Olive Pomace Oils (CXS 33-1981) . Codex Alimentarius Commission (FAO/WHO) , 2015.
- Regional Standard for Unrefined Shea Butter (CXS 325R-2017), amended 2022 . Codex Alimentarius Commission (FAO/WHO) , 2022.
- Triterpene alcohol and fatty acid composition of shea nuts from seven African countries . Akihisa T. et al., Journal of Oleo Science 59(7) , 2010.
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