要点
- トレース、ジェル化、スーパーファット、熟成は、どのレシピも知っているものとして扱う四つの言葉です。
- 石けん作りでいうアルカリ(lye)は、固形石けんなら水酸化ナトリウム(NaOH)、液体石けんなら水酸化カリウム(KOH)です。
- 鹸化価は油脂に必要な苛性ソーダの量、スーパーファットは油脂のうち意図的に鹸化させずに残す量です。
- 各用語には、それをきちんと説明するガイドへのリンクを付けています。
用語は五十音順に並べ、英字で始まる用語は最初にまとめました。本やほかのサイトでは英語のまま出会うことが多いので、英語の用語を括弧内に添えています。詳しい話がある用語には、それを説明するガイドへのリンクを付けています。
A–Z
CPOP コールドプロセス・オーブンプロセス(cold process oven process)の略。型に流したばかりの石けんを、温めてからスイッチを切ったオーブンに入れ、ジェル化させる方法です。ジェル化を参照。
IFRA 国際香粧品香料協会(International Fragrance Association)。そのIFRAスタンダードが、製品の種類ごとに各香料素材の上限濃度を定めています。石けんはカテゴリー9です。石けんの香りづけを参照。
INCI 化粧品原料国際命名法(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients)。成分表示に使う標準の名称で、たとえばオリーブオイルはOlea Europaea Fruit Oilです。石けんの表示を参照。
INS値(INS) 油脂の鹸化価からヨウ素価を引いた数値で、石けんのバランスの大まかな目安として使われます。ヨウ素価とINS値を参照。
KOH 水酸化カリウム(苛性カリ)。やわらかい石けんや液体石けんに使うアルカリです。通常、純度約90%で売られています。NaOH、KOH、苛性ソーダと苛性カリの併用を参照。
MPソープ(melt and pour、MP) 溶かして固める石けん。できあがった石けん素地を溶かし、色と香りを付けて型に流すもので、苛性ソーダを扱う必要がありません。MPソープの基本を参照。
NaOH 水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)。固形石けんに使うアルカリで、純度100%近いビーズ状やフレーク状で売られています。苛性ソーダの安全な扱い方を参照。
pH 酸性・アルカリ性の尺度。固形石けんは1%溶液でpH 9〜10ほどで、これは欠陥ではありません。石けんのpHと検査を参照。
PPO per pound of oils(油脂のポンドあたり)の略で、量を示す米国式の表し方です。香料1 oz PPOは油脂16 ozごとに1 oz、つまり6.25%です。石けんの香りづけを参照。
あ・い
アッシュ(ash) ソーダアッシュを参照。
引火点(flash point) 香料の蒸気が炎で引火しうる温度。保管や輸送では重要ですが、コールドプロセスの石けんではほとんど関係ありません。
インフュージョン(infusion) ハーブや花、根を浸して色を移した油や水。ハーブ、花、インフュージョンを参照。
え・お
液体油脂(ソフトオイル、soft oils) 室温で液体の油。オリーブ、ひまわり、キャノーラ、アーモンドなどです。肌あたりがやさしく、やわらかめの石けんになります。油脂の選び方を参照。
エンベッド(埋め込み、embed) 新しいバッチに埋め込む石けんのかけら。キューブ、カール、型抜きした形などです。エンベッドとトップを参照。
オレンジスポット(DOS) dreaded orange spots(恐れられているオレンジ色の斑点)の略。石けんの中の不飽和脂肪が酸化してできる、酸敗臭のあるオレンジ色の斑点です。スーパーファットだけが原因になるわけではありません。多価不飽和の油、微量の鉄や銅、熱、光のほうが大きく影響します。オレンジスポットを参照。
か
カスティール石けん(castile) オリーブオイルだけで作る石けん。現在「カスティール」として売られている液体石けんの多くは、ほかの油も含んでいます。カスティール石けんを参照。
苛性ソーダ(lye) 油脂を石けんに変えるアルカリ。固形石けんには水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、液体石けんには水酸化カリウム(苛性カリ)を使います。苛性ソーダの安全な扱い方を参照。
苛性ソーダ過多(lye-heavy) 油脂が使い切れないほど苛性ソーダが多く、そのために腐食性をもつ石けん。石けんのpHと検査を参照。
苛性ソーダだまり(lye pocket) 混ざりきらずに石けんの中に閉じ込められた、苛性ソーダ水溶液のたまり。危険なので、その石けんは使わないでください。石けんのトラブル対処を参照。
苛性ソーダと苛性カリの併用(dual lye) 水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの両方を使うレシピ。シェービングソープやクリームソープでよく使われます。NaOH、KOH、苛性ソーダと苛性カリの併用を参照。
苛性ソーダ濃度(lye concentration) 苛性ソーダ水溶液に占める苛性ソーダの割合:苛性ソーダ ÷(苛性ソーダ+水)。当サイトの計算ツールの初期値は33%の水溶液です。水と苛性ソーダ濃度を参照。
苛性ソーダのディスカウント(lye discount) 油脂が受け入れられる量より少ない苛性ソーダを使うこと。スーパーファットと同じ数値を、反対側から見たものです。スーパーファットと苛性ソーダのディスカウントを参照。
釜焚き石けん(full-boiled soap) 工業的に釜で煮て作る石けん。過剰な苛性ソーダで煮た後、塩析してグリセリンを抜きます。石けんができるまでを参照。
き
偽トレース(false trace) 鹸化が進んだからではなく、固形の油脂が冷えて固まったために、とろみがついて見える生地。温めたり混ぜ続けたりすると、またゆるくなります。トレースを参照。
急激な固化(シーズ、seizing) 鍋の中の生地が数秒で固まってしまうこと。たいていは香料が原因です。トレースの加速、急激な固化、ライシングを参照。
キレート剤(chelator) 石けんの中の鉄や銅などの金属イオンと結びつき、それらが酸敗を速められないようにする添加物。よく使われるのはエデト酸四ナトリウムとクエン酸ナトリウムです。石けんが一回の洗浄で出す量は、硬水を軟水にするにはまったく足りません。酸化防止剤とキレート剤を参照。
く
グリセリン(グリセロール、glycerin) 鹸化の副産物。手作り石けんにはそのまま残り、空気中の水分を引き寄せます。
グリセリンリバー(glycerin rivers) 石けんの中を走る半透明の筋。水の多いローフがジェル化の後にゆっくり冷えるとでき、顔料、とくに酸化チタンがそれを目立たせます。害はありません。グリセリンリバー、ひび割れ、過熱を参照。
け
鹸化(saponification) 油脂が苛性ソーダと反応して、石けんとグリセリンができる反応。石けんができるまでを参照。
鹸化価(SAP値、SAP value) 油脂一グラムを鹸化するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数。石けんの作り手は、油脂のグラムあたりのNaOHのグラム数で示すことも多いです。鹸化価とはを参照。
こ
コールドプロセス(CP法、cold process) 油脂と苛性ソーダ水溶液を混ぜ、バッチ自体の熱で型の中で反応を終わらせて作る石けん。はじめてのコールドプロセス石けんを参照。
固形油脂(ハードオイル、hard oils) 室温で固体の油脂。ココナッツ、パーム、バター類、牛脂、ラードなどです。硬い石けんになります。油脂の選び方を参照。
個別型(cavity mould) 石けん一個ずつの形のくぼみが並んだ型。ローフを作って切り分ける型とは違います。石けんの型を参照。
さ
ザップテスト(zap test) 石けんを舌に当て、遊離した苛性ソーダの「ピリッ」とする刺激(zap)を感じ取る方法。おすすめしません。石けんが苛性ソーダ過多なら、腐食性の石けんを口に入れることになるからです。フェノールフタレイン、pHメーター、滴定なら、同じ問いに安全に答えられます。石けんのpHと検査を参照。
酸化チタン(titanium dioxide) 石けんをより白く明るくするために使う白い顔料。先に分散させる必要があります。石けんの色付けを参照。
酸化物顔料(オキサイド、oxides) 酸化鉄(と酸化クロム)の顔料。石けんの中で安定し、強くマットな色を出します。石けんの色付けを参照。
酸化防止剤(antioxidant) ローズマリーエキスやミックストコフェロール(ビタミンE)など、油脂の酸化を遅らせる添加物。防腐剤ではなく、微生物には何の効果もありません。酸化防止剤とキレート剤を参照。
し
ジェル化(ジェルフェーズ、gel phase) ローフ自体の熱で、中心から外側へ向かって半透明になり、色が濃くなる現象。主に見た目の違いです。ジェル化すると色が鮮やかになりますが、ジェル化した石けんもしていない石けんも安全性は同じで、熟成後の硬さも変わりません。ジェル化を参照。
脂肪酸(fatty acid) 油脂を構成する長い炭素の鎖の一つ。油脂がどの脂肪酸を含むかで、その石けんの硬さ、洗浄力、肌へのやさしさが決まります。脂肪酸と石けんの性質を参照。
熟成(cure) カット後の数週間、石けんから水分が抜け、硬く、長持ちし、肌にやさしくなる期間。通常は四〜六週間で、カスティール石けんは数か月かかります。石けんの熟成と保管を参照。
シンデット(syndet) 石けんではなく合成界面活性剤で作るバー。たいてい石けんよりマイルドで、肌のpHに近いものです。シャンプーバーと、当サイトのシンデット計算ツールを参照。
す
水分カット(water discount) レシピの初期値より水を減らすこと。つまり、苛性ソーダ水溶液を濃くすることです。トレースが早く出て熱くなりやすく、石けんは早く型から出せて、ソーダアッシュや縮みも少なくなります。水と苛性ソーダ濃度を参照。
スーパーファット(superfat) 意図的に鹸化させずに残す油脂の割合で(鹸化率でいえば、全体からこの値を引いた残りの割合です)、固形石けんでは通常3〜8%です。油脂の自然なばらつきを吸収し、肌にやさしい石けんになります。スーパーファットと苛性ソーダのディスカウントを参照。
スクラブ(exfoliant) 角質を落とすために加えるもの。挽いたオーツ麦、ポピーシード、軽石、コーヒーかす、ヘチマなどです。石けんの添加物を参照。
スティックブレンダー(stick blender) ハンドブレンダー。手で混ぜると一時間以上かかるところを、数分で生地をトレースまで進めます。必要な道具を参照。
スワール(swirl) 色の違う生地を互いに動かして模様を作ること。インザポット、ドロップ、ハンガー、スプーン、台湾スワールなどがあります。スワールの技法を参照。
せ
精油(エッセンシャルオイル、EO) 植物から蒸留または圧搾して得る、濃縮された芳香性の油。多くは含まれる成分に応じて、IFRAスタンダードで石けんへの上限濃度が決められています。ラベンダーのように上限のないものもあります。石けんの香りづけを参照。
石けん生地(batter) 混ぜ合わせた後、型の中で固まるまでの、油脂と苛性ソーダ水溶液の混合物。
そ
層(レイヤー、layering) 生地を、多くは色を変えて、別々の層に流し込むこと。層とペンシルラインを参照。
ソーダアッシュ(soda ash) 石けんの表面にできる、炭酸ナトリウムの白い粉状の膜。反応していない苛性ソーダが空気中の二酸化炭素に触れてできます。害はなく、取り除けます。ソーダアッシュを参照。
ゾーレザイフェ(Soleseife) 塩水石けん。塩を溶かした水で作る石けんです。ソルトバーを参照。
ち・て・と
着色料(colourant) 石けんに色を付けるものすべて。酸化物顔料、ウルトラマリン、マイカ、染料、クレイ、植物の粉などです。石けんの高いpHに耐えられないものもあります。石けんの色付けを参照。
ディスカウント(discount) 苛性ソーダのディスカウントを参照。
トレース(trace) 石けん生地にとろみがつき、垂らすと表面に跡が残るようになった状態。ライトトレース、ミディアムトレース、ヘビートレースは、それぞれ向いているデザインが異なります。トレースを参照。
トレースの加速(acceleration) 生地がいつもよりずっと速くとろみを増し、流し込んだりスワールを作ったりする時間が少なくなること。たいていは香料が原因で、次いで熱と、硬い油脂の割合の高さです。トレースの加速、急激な固化、ライシングを参照。
に
乳化(emulsion) 混ぜ始めの最初の段階で、油脂と苛性ソーダ水溶液が分離しなくなった状態。トレースの前に来ます。トレースを参照。
乳酸ナトリウム(sodium lactate) 乳酸の塩で、苛性ソーダ水溶液に加えると石けんが硬くなり、早く型から出せるようになります。石けんの添加物を参照。
は
バスティール石けん(bastile) 大部分がオリーブオイルで、泡立ちのためにココナッツオイルやひまし油を少し加えた石けん。決まった線引きはありませんが、オリーブオイル70%以上とする作り手が多くいます。カスティール石けんを参照。
ふ
風袋引き(tare) 空の容器をのせた状態ではかりをゼロにし、入れたものだけを量れるようにすること。必要な道具を参照。
フェノールフタレイン(phenolphthalein) アルカリ性で赤紫色に変わる指示薬で、石けんの中の遊離した苛性ソーダを調べるのに使います。石けんのpHと検査を参照。
不揮発性油(fixed oil) 蒸発しない油。精油とは違い、石けんの原料になる種類の油です。
不鹸化物(unsaponifiables) ステロール、スクワレン、ビタミンEなど、苛性ソーダでは石けんにならない油脂の成分。石けんの中に残ります。鹸化の化学を参照。
部分ジェル化(partial gel) 中心だけがジェル化し、カットした石けんの中央に色の濃い円が出ること。見た目だけの問題です。ジェル化を参照。
フレグランスオイル(FO) 合成と天然の素材から石けん用に調合した香料。仕入先が使用量の目安とIFRA証明書を示しています。石けんの香りづけを参照。
噴火(ボルケーノ、volcano) 型の中の生地が過熱し、ひび割れたり、盛り上がったり、噴き出したりすること。たいていは糖分、ミルク、保温のしすぎが原因です。グリセリンリバー、ひび割れ、過熱を参照。
分離(separation) 生地や仕上がった石けんから、油や液体がしみ出してたまること。計量ミスや不完全な乳化の可能性があります。使う前に検査してください。やわらかい石けんと分離を参照。
へ
変色(モーフィング、morphing) 着色料が石けんの高いpHで色を変えること。一部のマイカ、染料、植物の色で起こります。石けんの色付けを参照。
ペンシルライン(pencil line) 二つの層の間にマイカや活性炭を振りかけて作る細い線。層とペンシルラインを参照。
ほ
保湿剤(humectant) 空気中の水分を引き寄せるもの。グリセリン、はちみつ、糖類、乳酸ナトリウムなどです。
ホットプロセス(HP法、hot process) 型に入れる前に、鹸化が完了するまで石けん生地を加熱する製法。冷めて固まれば安全で、四〜六週間かけて硬くなります。ホットプロセスの石けんを参照。
ま
マイカ(mica) 顔料でコーティングした鉱物の粉で、きらめきと色に使います。石けんの色付けを参照。
マスターバッチ(master batch) あらかじめ決まった濃度(多くは50%)で溶かしておき、水溶液のまま量って使う苛性ソーダ。水と苛性ソーダ濃度を参照。
よ
ヨウ素価(iodine value) 油脂の不飽和度を、100 gあたりのヨウ素のグラム数で表した値。高いほど石けんはやわらかく、早く酸敗します。ヨウ素価とINS値を参照。
ら・り・れ
ライシング(粒状化、ricing) 生地の中に米粒のような小さな粒ができること。たいていは香料が原因です。トレースの加速、急激な固化、ライシングを参照。
リバッチ(rebatching) できあがった石けんをすりおろし、少量の液体と一緒に溶かして、失敗を直したり、できたての苛性ソーダに耐えられないものを加えたりすること。ハンドミリングとも呼ばれます。リバッチを参照。
レンダリング(rendering) 生の動物の組織から脂を溶かし出して精製し、石けん用のラードや牛脂を作ること。ラードと牛脂の石けんを参照。